ついでながら、愛知県の新城市も似たような謂いわれだったはずだ。ニューカースルという地名はイングランドに複数あり、他と区別するために正式にはニューカースル・アポン・タイン(Newcastle upon Tyne:「タイン川に面したニューカースル」)と言う。
ニューカースルの周辺には炭田が多く、良質な石炭が豊富に採れたため、そこにわざわざ他所から石炭を持って行くことは、純粋に無駄なことでしかない。石炭は重く、輸送に手間も費用も掛かる。18世紀後半の英国で蒸気機関の普及によって産業革命が勃興したのは、運河網が整備されて石炭の輸送が効率化されたからでもあった。
このような背景に目を向けると、「ニューカースルに石炭を運ぶこと」がいかに「無駄なこと」であるかが実感できて、このイディオムの意味をより深く理解できるであろう。
なぜそんな意味に!?
「コヴェントリーに送る」の由来
〈コヴェントリーに送る〉send to Coventryは「村八分にする」という意味である。
イングランド中西部の工業都市コヴェントリーは中世に刃物・布地・手袋、16世紀にボタン、17世紀に時計、18世紀にリボン、19世紀にミシン・自転車、20世紀に自動車・家電製品など、多岐にわたる製造業で繁栄した。第2次世界大戦中にドイツ空軍の爆撃を受けて破壊された古い大聖堂の廃墟が現在も保存されている。この地名の原義は「Cofaが所有する樹」である。
なぜ「コヴェントリーに送る」が「村八分にする」なのかと言えば、このイディオムの由来には2説あり、1つは昔この街の住民が極度に閉鎖的だったため、ここに派遣された兵士が地域社会から完全に遮断されていたことに由来するという説、もう1つは17世紀の内戦(いわゆる「清教徒革命」)の時に議会派(清教徒)の拠点だったコヴェントリーで、王党派(国教徒)の兵士が冷遇されたからという説である。
動詞をbeに代えてbe in Coventryにすると、「村八分にされている」という状態を表わす表現になる。