フィンランドの
休暇の過ごし方

 例えば、私の祖父母のサマーコテージはサイマー湖というフィンランド最大の湖の小さな島にあって、建物はすべて自分たちで建てていました。そして私が小さかったころは電気も水道も、もちろんインターネットもなく、都市の生活からはかけ離れており、かなり不便を感じる環境でした。シャワーもないので、サウナの後は湖で体を洗います。

 サマーコテージでは朝起きて、朝ごはんを作って食べて食器洗いをして、お昼も夜もこのルーティンを繰り返します。その合間に庭の仕事や日曜大工をしたり、ハンモックで読書(私はずっとムーミンの漫画を読んでいました)をしたり、サウナに入った後湖で泳いだり。シンプルなルーティンの日々にほっとします。退屈したら近くの村へボートで行って、アイスを買って食べて戻る……といった生活です。

 サマーコテージはホテルと違って身の回りのことを全部自分たちでやらなくてはならないのですが、自然の中であえて少し不便な日々を送ることがポイントかもしれません。生活の原点に戻って、心に余白ができて、何が重要かに気づくことにつながります。

 社員みんなが3週間以上も休んでいたら仕事が回らなくなるのでは、と思われるかもしれませんが会社が困ることはありません。なぜならフィンランドにおいて長期休暇を取得する制度は今から50年以上も前の1970年代からあるもので、社員の長期休暇取得を前提としたスケジュールが組まれているからです。

 例えば夏休み時期の数カ月前には希望の日程を調整し合い、それを上司や総務部などが、社員がみんな交代で休めるようにスケジュールを組んで、仕事の引継ぎも丁寧に行い、パソコンを開かなくとも、業務にさほど支障なく休めるような体制をとります。社会人としての基礎スキルの一つで先を読む力があるかと思いますが、休みが長いというのを考慮して、そこから逆算して仕事を進めればいいだけです。