最大心拍数は【220-年齢】とされています。60歳の人で考えますと、心拍数が160まで大丈夫になります。

 しかし、普段、運動をしていない人に心拍数160への上昇は大変な負担です。心拍数を120程度にとどめるのが適切です。

 もちろん、心臓が強くなってきたら、160まで負荷をかけても大丈夫です。

 しかし、特に心不全の既往歴がある人は、この心臓負荷では心不全が増悪するので、心拍数を90までにとどめるように注意してください。苦しくない心臓負荷でのトレーニングが大切です。

 そして、心不全を改善する治療こそが、適切な筋肉トレーニングによる心臓負荷訓練なのです。

転倒を防ぐための筋肉は
殿筋群と大腿四頭筋

 筋肉は高齢になると、屈曲筋が優位になり、パーキンソン病のような姿勢になりがちです。

 このため、伸展筋を鍛えることが重要です。先にあげた抗重力筋を鍛えて姿勢をよくします。

 さらに、殿筋群と太ももを鍛えて、立派なお尻を作ることが重要です。100歳でもヒップアップしたお尻を保てたら、転倒や骨折は防げます。握力が15kg以下では転倒しやすくなりますので、20kg以上への筋力強化が目安になります。

 体力は無理のない有酸素運動を50分間は続けることが重要です。身体の基盤を作るには、週2〜3回を2カ月続けます。その後は週1回を継続します。もちろん、初めから週2〜3回の導入が難しい人は週1回の低負荷で始めてください。徐々に体力がついてきます。

 6分間歩行テスト(編集部注/運動耐容能を評価するための、簡便な運動負荷試験。30メートルの直線上を6分間できるだけ速く歩き、歩行距離を測定する)で400m以下の人は体力低下、屋外活動能力の低下と判断できます。200m以下になると、身の回りの行動においても体力低下が起こりますので、有酸素運動による体力向上が必要になります。

 バランスは、脊柱起立筋と大腰筋の強化訓練が必要です。凸凹の上を歩いたり、柔軟性の高いマットの上で片足で静止したり、中で水が動く10kg程度の重りを持って片足で静止したりすると、バランスが鍛えられます。