教育・受験 最前線#30
Photo by Hiroaki Miyahara

創立20周年を迎え、京都の難関私立小学校として人気が定着した立命館小学校。連載『教育・受験 最前線』では、昨年度から同校の校長に就任した小笹大道氏に、人気の背景と小中高大を通じたライバル校の同志社との違い、卒業生の進路などを聞いた。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

同志社よりも国際教育は優位
古都・京都の学校として文化教育にも注力

――今年、創立20周年の節目を迎え、関西における人気の私立小学校として定着しました。その要因から教えてください。

 開校当時は、ちょうど「ゆとり教育」の見直しが始まったタイミングで、本校が掲げた四つの柱、すなわち「確かな学力」「真の国際人」「豊かな感性」「高い倫理観と自立心」の中でも、特に「確かな学力」が、保護者の支持を集めたことが要因だと思います。

 ただし、現在はさらに先に進んで、基礎的な学力を身に付けるだけにとどまらず、子どもの探究心や活用力を伸ばし、国際教育のあり方も時代の変化に即したものに変えることが求められています。

 そこで昨年、本校は新たなコンセプトとして、「世界を変えていく人が育つラーニング・コミュニティ―子どもと大人が共に挑戦をたのしみ、変化・成長し続ける学校」を打ち出しました。開校時から子どもが主体的に考えていく教育を大切にしてきましたが、これを土台に国際性をより育むことを目指しています。

 そのために、さまざまな国に児童を派遣して国際交流をより充実させたいと考えています。すでに2009年から高学年の希望者を対象に海外派遣していますが、とりわけ小学5~6年生が10週間もの長い期間、たった一人でオーストラリアの学校で海外生活を送るというターム留学(現地の学校への学期単位の留学)は、本校の国際教育の大きな特色です。

 一方、「ラーニング・コミュニティ」を新コンセプトに掲げた理由は、これまでの学校教育は、ほとんどが教師と児童という関係の中で完結してきましたが、それだけでは限界があると感じるようになったからです。つまり、われわれ教員が全て教えるのではなく、関わっていただくことで、活動の幅が広がる部分は保護者や企業や団体、地域の方々など外部にお願いしようということです。例えば海外のある国のことを子どもに教える場合、教員よりもその国に精通している方々に協力していただいた方が、より学習が深まりますよね。

――児童の英語力は入学時から高いレベルにあるのでしょうか? また、英語を全く学んだことがない子どもが入学しても海外留学を目指せますか?

 もちろん目指せます。帰国子女やインターナショナルプリスクール出身で英語経験豊富な児童も入学してきますが、普通の幼稚園、保育園から入学してきて、一から英語を学ぶ子どもも多い。本校ではフルタイムの外国人教員を6人採用しており、英語の授業だけではなく、日常の学校生活の中で自然と子どもが英語と触れ合っています。

 結果、児童の英語力は6年生で、英検(実用英語技能検定)で言えば、おおむね3級から準1級ぐらいのレベルまで上達します。

――京都の私立大学で、立命館大学のいわばライバル的存在である同志社大学も、立命館小と同じ年に同志社小学校を開校しました。一般的には、同志社大の方が、同志社英学校として設立された前身からも、英語や国際教育に強いイメージがありますが……。

 国際教育で言えば、現在は大学も小学校も立命館の方がより優位に立っていると感じています。国の評価を見ても、例えば立命館大と立命館アジア太平洋大学(APU)は今年3月、文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援事業」(SGU)の最終評価において、最高評価である「S評価」を共に獲得しています。

 その立命館大と連携し、大学にいる留学生と本校の児童の間で国際共修を盛んに行っています。立命館大学の各キャンパスで学ぶ国際学生が、1週間にわたって小学校に来て、英語の授業だけではなく、休み時間も給食も掃除の時間も音楽の時間も全て一緒に過ごすワールドウィークがその一例です。逆に本校の児童が立命館大グローバル教育学部(GLA)に行ってワンデー・キャンプを実施するなどしています。

 こうした国際教育から、本校卒業生が最終的に米カリフォルニア大学バークレー校や米コロンビア大学など、世界のトップ大学を含む海外大へ進学するケースも少なくありません。

――国際教育以外にも立命館小ならではの特徴はありますか?

 もう一つの特徴は、日本や京都の文化を学ぶ「京都学」です。やはり古都・京都にある学校ですので、例えば裏千家の方を招いた茶道をはじめ、日本舞踊や箏、和太鼓、草木染めなど、伝統文化を京都在住のその道の一流の方々から学ぶカリキュラムを設けています。

 ただ、京都学も先ほど述べた国際教育にもつながっていて、例えば日本舞踊などの日本文化をオンラインで海外の子どもたちに英語で紹介するなど、自分たちのアイデンティティーをちゃんと英語でしゃべれるトレーニングをした上で、子どもたちを海外に派遣しています。

 同時に理系教育にも注力しています。この4月から、「VEXロボティクス」という米国生まれのSTEM(科学・技術・工学・数学)教育教材を導入しました。VEXを導入している日本の私立小は少数です。また、本校の卒業生の大半が進学する立命館高校は、文部科学省からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業の指定を初年度から24年間継続して受けており、小中高を通じて理系教育に定評があります。

――立命館小を卒業した後、中高一貫校である立命館中学校に推薦で進学する児童がほとんどですが、そのまま立命館大学まで進学する児童はどれくらいの割合でしょうか?

 年によってバラつきがありますが、本校卒業生の8割前後が、そのまま立命館大に進学しています。