わが子がぐんぐん伸びる!中高一貫校&塾&小学校【2026年入試版】#4

中学受験塾における横綱といえば、東のSAPIX(サピックス)と西の浜学園だ。特集『わが子がぐんぐん伸びる!中高一貫校&塾&小学校』の#4では、この東西の横綱が初顔合わせ。SAPIXの広野雅明教育事業本部本部長と浜学園の松本茂学園長が、中学受験ブームから最強の理由、東西の違い、低学年の塾通い、来る2026年入試の予測まで熱く語る対談の後編をお届けする。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

関西の塾の方がベタっとしている?
算数の伝説的良問は「灘発」が多数

>>前編『「かつての中受ブームとは違う」SAPIX×浜学園が初対談!東西の最強中学受験塾の重鎮2人が直近25年入試を大総括【対談前編】』

――サピックスも浜学園もお互いの本拠地に進出していますが、中学受験塾における東西の違い、難しさなどはありますか?

広野雅明・SAPIX教育事業本部本部長 やはり東京人と大阪人の気風の差はあると感じますね(笑)。

 東京の保護者は、関西のような密着型といいますか、塾があれこれ世話を焼くことを敬遠する家庭が少なくない。もちろん全く連絡をしないなど完全にノータッチなのはダメですが、逆に毎晩のように家庭に連絡を入れるようなこともNG。「困ったときは助けてほしいけれど、そうでないときは放任してほしい」という、塾は塾、家庭は家庭、学校は学校みたいな意識が強いのかなと感じますね。うちが関西に進出したとき、どこまで関西の塾と同じように密着していくかがやはり課題になりました。

 あと根本的な東西の違いとして、東京の入試は4教科が主流なのに対し、関西の男子難関校の大半は社会科を除く3教科で受験できます。そのため社会科という教科をどの程度までやるか、というカリキュラム上の大きな問題があり、非常に悩ましい。

SAPIX・広野雅明教育事業本部本部長ひろの・まさあき/SAPIX草創期から算数を指導、算数科教科責任者や教務部長などを歴任。現在は入試情報や広報、新規事業などを担う。

 逆に、こと算数に関しては関西の学校の方が難しい問題を多く出しますしね。先ほど(前編参照)松本さんから首都圏の流れが関西に波及する、というお話がありましたが、算数という教科は必ずしもそうではなく、灘中をはじめとした関西最難関校の意欲的な出題が東へ伝播することも多い。歴史を振り返ると、伝説的な良問の元ネタは灘だったというケースが少なくないですよ。

松本茂・浜学園学園長 実は、私はその社会科を教えてまして(笑)。首都圏の子どもたちは、社会科を含めた4教科全てを頑張って勉強してくれますし、学校の入試でも意欲的な出題がなされるので、教えている側としては面白いですね。ただ、中学入試ではどうしても算数が合否を分けることが多い。算数の問題数は配点に対して少ないですから、この一問を取れるか否かで大きな差が出ます。その算数に強みがあることが、関西を地盤にしてきた浜学園の取り柄だなと。

 また広野さんが指摘された、関西の塾と家庭の距離の近さですが、確かに関西の塾はベタっとしています。ただ、その中でもうちは首都圏の塾と関西の塾の中間といいますか、子どもが自走できる学習に重きを置いているので、東京進出時もそれを売りにしていけるかなと思ったのですが、それこそサピックスさんの壁は高く(笑)。

 やはり関西人がサピックスさんを見たら「首都圏の塾」、首都圏の人が浜学園を見たら「関西の塾」というバイアス、先入観がどうしてもあるので、まずはそこを乗り越えていかなあかんと思いますね。自身の強みを生かしつつ、それぞれの地域のニーズに合わせた進化をしなければと。

浜学園・松本茂学園長まつもと・しげる/浜学園学園長。同塾講師歴24年。社会科主席主管を務めたのち、2022年4月より現職。同塾は24年入試で、「関西最難関9校」における塾別合格者数で9校全てに最多の合格者を出す「グランドスラム」を達成した。

 ただし、中学受験を突破するための学力や学習習慣は、東西を問わず同じなんです。きっとサピックスさんの卒業生も同じことを言っていると思いますが、「中学受験のときほど勉強したことはない」と。培った学力は一生の宝物なんだと思います。それを身に付けるという意味で、東西の違いはないと思いますね。

広野 そうですね。結局、中高一貫校にとって「入試は0時間目の授業」であると。中学入試で出される問題は「入学後にこのような勉強をやりますよ」という学校側のメッセージなんですね。入学後にその子がきちんと勉強を続けられるための通過儀礼と言ってもいい。だから、入試に合格できる実力を付けることが、われわれ進学塾の使命だろうと思うんです。

 加えて、昨今の入試問題は、いわゆるパターン暗記や知識の詰め込みでは解けない。さまざまな解法を教えなければいけませんが、それをパターン暗記で詰め込んだとしても、入試には通用しない。よくインターネット上で、テクニカルなことを自分の頭で考えずに暗記させるのがいい、という内容の記事があったりしますが、仮にそれで合格できたとしても、入学後に辛くなるだけです。

次ページでは、サピックスと浜学園が最強たる理由のほか、受験勉強の低年齢化の意義、そして11年ぶりの「サンデーショック」に当たる2026年入試の動向と注目校を明らかにする。