しかし、いまや時代は大きく転換しています。総務省の統計によると、水道料金の収入の基礎となる「有収水量」(料金徴収の対象となる水の量)は、2000年の日量3900万立方メートルをピークに減少を続けています。

 2015年には日量3600万立方メートル、2065年には日量2200万立方メートルまで減ると予測されています。これはピーク時の約4割に相当します。

 人口が減っても、水道施設の維持管理に必要な費用はそう簡単に減りません。むしろ、利用者が減れば、1人当たりの負担は重くなります。とくに過疎化が進む地域では、水道管の長さは変わらないのに利用者数は激減し、経営効率は著しく低下します。都市部では人口減少が緩やかでも、地方では急速に進行しており、地域間格差も拡大しています。

 このように、人口減少は水道経営の根幹を揺るがす構造的な課題です。水を使う人が減り続ける中で、どうやってインフラを維持していくか──これは日本社会全体が直面する問題でもあります。

自治体の水道を使わず
地下水を利用する施設が増加

 料金収入を減少させるもう1つの要因が、「地下水利用専用水道」の広がりです。

 これは、病院やホテル、工場などの大口利用者が、敷地内に井戸を掘り、自治体の水道を使わずに地下水を独自に利用する仕組みです。水道法で定められた水質基準を満たし、保健所に届け出れば、飲用水として使用することができます。

 この動きは2000年代に入り、地下水処理装置の小型化・低価格化が進んだことで加速しました。

 日本水道協会の調査によると、給水人口10万人以上の水道事業者を対象にしたアンケートで、2002年時点では88件だった地下水利用専用水道は、2017年には1934件に増加しています。その背景にはコスト削減と災害対策というニーズがあります。

 たとえば静岡県のある病院では、地下水利用によって年間約500万円もの経費削減を実現しました。非常時に備えて水道契約は維持していても、平常時は地下水を全面的に活用し、使用量に応じて支払う従量料金を大幅に抑えることができるのです。