また、食器洗い乾燥機も普及しています。5人分の食器を洗う場合、手洗いでは70リットルかかるところ、食洗機ではわずか10リットル。内部に貯めた水を循環させる仕組みによって、大幅な節水を実現しています。
こうした機器は日々の暮らしの中に自然に取り入れられており、使う人が節水を意識していなくても、水の使用量は確実に抑えられているのです。
また、生活スタイルの変化も影響しています。自宅での調理が減り、コンビニや外食の利用が増えると、食器や調理器具を洗うための水も必要なくなります。水を使わない生活は、環境にとっては望ましい変化です。
しかし、水道事業にとっては「水が売れなくなる」という意味を持ちます。水道の事業収入は使用量に応じて得られるため、家庭や企業で節水が進むと、水道料金収入もじわじわと減っていくのです。
一見すると、水の使用量が減っているのだから、料金も安くなるはずだと思うかもしれません。しかし、実際にはその逆の現象が起きています。ここに、水道料金の構造的な特徴があります。
人口減少が水道事業に
与える影響は深刻
料金収入が減るもう1つの大きな理由は、人口の減少です。日本の総人口は、2020年の国勢調査によれば1億2615万人でしたが、国立社会保障・人口問題研究所の推計(令和5年・中位推計)によれば、2045年の1億880万人を経て、2056年には1億人を割って約9965万人、2070年には8700万人にまで減少すると見込まれています。
人口減少が水道事業に与える影響は深刻です。
なぜなら、水道は利用者が多ければ多いほど効率的に運営できる「スケールメリット型」のインフラだからです。
かつて水道が整備された高度経済成長期には、人口が増え、水の使用量も伸びる一方でした。水道事業者は右肩上がりの需要を前提に施設を整備し、多くの利用者でコストを分担することができていました。