さらに、東日本大震災の際には、周囲が断水する中、地下水を備えていた病院が機能を維持し続けた事例も報告されています。


一方で、水道経営の観点からは、これが課題になります。水道事業のコストは、その多くが固定費です。管路や浄水場などの維持管理費は利用の有無にかかわらずかかるため、従量料金だけでなく、固定費の一部も反映されているのが現状です。したがって、大口利用者が地下水に転換し、従量料金を支払わなくなると、他の利用者の負担が相対的に増すという構造が生まれてしまいます。
一部自治体では、地下水利用から水道へ転換する事業者に対する減免制度や、地下水利用者からも施設維持のための負担金を徴収する制度を導入していますが、全国的にはまだ少数です。
技術の進化によって水を自給する手段が広がる一方で、「公共の水道を地域でどう支えるか」という問いがあらためて浮かび上がっています。