しかし、そんな基本的なことを教えてくれる人はいませんでした。焦りたくて焦っていたのではありません。先輩からは、「自分の頭で考えて!」と言われましたが、心の中では(今も自分の頭で考えているわ!他人の頭で考えられるか!)と反論していました。

未来図を描けることが
「分かる」という状態

 あのときの私が「分かる」ということを理論的にも、感覚的にも知っていれば、冷静に対応できたはずです。

 今、分からなくても、時間をかけて分かる方法を知っているので、焦ることはなくなりました。そして、分かってきたら、勇気が湧いてきます。「何か楽しいことができるかもしれない」とテンションも上がってきます。そのときには分からなかった過去の自分のことなんて忘れてしまっています。

 でも、分からないときには、「分かったあとの自分」は想像できません。ただ、何度か繰り返しているうち、時間をかけて「分からない」自分から、「分かる」自分に変化できるので、焦らずやっていこうと思えるようになりました。

 自分を信じられるようになるには、私の場合、時間がかかりましたが、結局コツコツとやればいいのです。

 今になって思うのは、私にとって「分かる」とは、とても面倒な作業ではあるのですが、何をするかを決めるために自分だけの地図をつくるような感覚だということです。

 最初は部分的な地図しかできませんが、徐々に地図全体が完成していきます。

 自分だけの地図をつくるからこそ、本質に近づくことができます。フレームワーク(編集部注/課題解決など、特定の目的を達成するための基盤や思考の型)を使ってしまうと、すぐに全体が「分かる」感じが持てるのですが、それは錯覚であると思っています。

 現実はそんなシンプルに整理できるものではなく、自分なりに要素を1つひとつ抽出して関係性を可視化するからこそ、つながりが徐々に見えてきます。

 地図ができれば、次の一歩を迷いなく進むことができます。