日本語習得の努力はしているが……
この男性は、日本語習得の大変さについてもコメントしていた。
「時々、日本の報道を見ると、近年来日した中国人は日本語を勉強する気がまったくなく、日本社会に無関心と報じられている。それも一部の中国人に限った話だと思う。少なくとも、僕や周りの中国人は一生懸命日本語を勉強している。もちろん、もう中年で、年も年だから、なかなか覚えることができない。一日の仕事と家事、子どもの世話が終わると、夜になってやっとパソコンの前に座り、オンラインで勉強を始める日々だ。一日も早く言葉の壁を取り除き、日本のみなさんとコミュニケーションを取りたい、早く日本社会に溶け込みたいという一心で、たとえどんなに疲れていても、頑張るしかないのだ」
同じ在留資格で来日した30代前半の女性も、日本語の習得に奮闘しているという。
「日本語は思った以上に難しい。身内と身内でない人、目上と目下、女性と男性、それぞれ使う言葉が違う。それに地名や人名は、漢字を当てた際の読み方が不規則だし。日本人にとっては当たり前のことでも、私たち外国人にとっては本当に至難の業だ。今は、あらゆる機会をつかんで日本語を覚えようとしている。外出の際に、道端にあるお店の看板を見て、読み方の練習をしている」
日本語の難しさは、来日して長い筆者であっても常に実感している。いまだに助詞の使い方をよく間違えるし、カタカナ言葉は永遠に覚えられない気がする。
こうした話で盛り上がる中、来日した当初は日本語が全くできなかったが、わずか3年で「宅地建物取引士」と「行政書士」の国家資格に合格した中国人女性がいる。本人いわく「血と涙の結晶です」とのことだった。
改正案がもたらす深刻な影響
このように一生懸命日本語を覚えよう、日本文化を身につけようと人並みならぬ努力をしている人たちが、今回の「改正案」に戦々恐々としている。それは、「改正案」に「日本国籍や永住権取得者の雇用」という致命的な条件があるからである。
先述の行政書士は指摘する。「『経営管理ビザ』の企業のほとんどは中小企業だ。多くは来日前に、中国国内ですでにビジネスを行っていた。アメリカなど海外と取引がある経営者も少なくない。日本に来て、一からビジネスを始めて軌道に乗せる途中の会社がまだ多い。黒字にするのが精いっぱいの中で、とても人を雇う余裕がない。しかも、日本はどこも人手不足で人材を奪い合う状況の中で、果たして日本国籍を持つ、あるいは永住権を取得した人たちは、中国人が経営する中小企業に来てくれるのだろうか」
さらに、この雇用問題は、ある人々の将来に打撃を与える可能性もあるという。
「それはすでに来日している子どもがいる家庭だ。子どもは順応力があり、時間がたつにつれ、日本の学校の生活になじんで友達もできた。もしビザの更新ができなかったら、中国に戻らなければならない。ご存じのように、中国の学校は競争が熾烈で、一旦離れたら、勉強をどう頑張っても追いつかない。子どもが中国で完全に孤立する可能性もある。家族にとって致命的な痛手だ」と指摘した。