日本社会への思いと現実のギャップ

 経営・管理ビザで来日して1年未満のある男性は、次のように筆者に語った。

「近年来日した中国人は、日本社会に無関心だという指摘がよくある。しかしそれは、1を10に拡大した報道だと思う。我々が日本社会に溶け込みたい気持ちを持っていても、日本独特の、日本人にしか見えない隠れたルールや空気を読む文化などは難しすぎる。我々外国人がこれらを読み取れるようになるには、長い時間を要するというのが正直な感想だ」

 彼が言いたいことはよく分かる。日本人同士ならば言わずとも空気を読むような場面でも、多くの外国人は言われた通りに理解するし、言われないことは分からない。また、「日本のルールは分からないから、誰かに教えてほしい」というのもよく聞く悩みだ。例えば、ゴミ捨て一つ取っても、ルールを知らない外国人は適当にゴミを出して後から怒られたり陰口を叩かれたりする。こういう「誰かがルールを教えてくれれば解決することなのに……」という悩みを持つ中国人は少なくない。

 また、彼はこうも言っていた。

「僕は車を運転しない。生活はとても不便になるが、例え小さな事故でも起こしたら、ビザの更新に影響が出るからだ。交通ルールだけではない。トラブルを起こさないように、あらゆる面で細心の注意を払いながら日々を過ごしている。心身ともに疲弊するが、日本という国が好きで、日本で生活するという道を選んだのは自分だから、文句はない。いつか、日本語が上手になったら、日本人の友達ができたら、初めて生活を楽しめると思う」

 この話を聞いて、筆者は切ない気持ちになった。

 日本の人口減少は止まらない。労働力が足りない。

 その一方で、日本の価値観や文化を認め、日本に憧れて来日した外国人は増えてきている。

 日本社会とのかかわり方、言語習得の難しさ、どうしたら一日も早く日本社会に溶け込むことができるのか。さまざまな悩みを抱え、模索しながら異国で生活している彼らは、日本の社会や経済に寄与している部分もあるはずだ。

 最近、「日本人ファースト」を叫び、外国人へのヘイトを利用して選挙を有利にする政治家が増えている日本。これは正しいのか、本当に日本のためになるのか。今もう一度、立ち止まって考える時期に来ていると思う。