「考えるのが面倒くさいから…」
面食らった保護者の希望

 一例を挙げると、随分昔の話ではあるのだが、面談で「わたし、考えるのが面倒くさいから、ウチの子の受験校を先生が全部決めてください」と保護者から言われて、面食らったことがある。

 本書では、中学受験の世界で散見されるネオ・ネグレクト行為の事例が数多く登場しているだけでなく、中学受験とは別の世界の話もふんだんに盛り込んでいる。「中学受験の世界」はあくまでも一例という扱いである。

 それでは、先ほどの自塾の指導体制、その位置づけの話に戻ろう。

 わたしの塾は共働き世帯の事情に配慮して、子どもたちの「学童」「託児所」にもなり得る塾であり続けたいと決意している。忙しくしている保護者はわたしの塾のそういうシステムを存分に「活用」してほしい。

 ただし、である。

 わたしたち塾サイドから言わせれば、保護者から「活用」してほしいが、「利用」される場所であってはならないとも思うのだ。

 つまり、塾がわが子に対してあれやこれや細かく対応してくれるから、あとは丸投げでよいとは考えてほしくないのだ。冒頭で申し上げた「中学受験は二人三脚か?」という問いに対する回答は「半分正解で半分不正解」だからである。わが子の中学受験の成否にはやはり保護者の温かな支えが大切になる。

 そういう意味では紛れもなく中学受験は「親子二人三脚」の世界である。

「受験校は先生が決めてください」親の丸投げに絶句…中学受験の正しい「二人三脚」とは?『ネオ・ネグレクトーー外注される子どもたち』(祥伝社新書)/中学受験指導に30年間携わる著者が、ここ数年で散見されるようになってきた新しい親の状態について語る。この現象の問題点の根本にあるのは何か。中学受験に関わる親も、そうでない親も、読んでおきたい一冊。