ブリヂストン リストラ後の跳躍#5Photo:PIXTA

大口径や高付加価値ブランドのタイヤを強化する「プレミアム戦略」。この戦略を進める裏で、ブリヂストンは“致命的弱点”を抱えている。一体何か。中国メーカーなど新興勢も台頭し、「ブリヂストン包囲網」は狭まっている。特集『ブリヂストン リストラ後の跳躍』の#5では、ブリヂストンの致命的弱点とその克服策に迫る。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

高単価でもうかる大口径タイヤ
プレミアムタイヤ販売比率25年度60%超へ

 ブリヂストンの石橋秀一最高経営責任者(CEO)が、2020年3月のトップ就任以降、5年超かけて進めてきたのは、事業売却などの再編・再構築であった。同社はまさに今、リストラフェーズから成長フェーズへと移行している(詳細は、本特集#1『【独自】ブリヂストンが国内で「数百人規模の希望退職」を募集!石橋CEOによるリストラ策を一覧にして徹底解明《完全版》』参照)。

 成長の原動力として期待を一身に受けているのがタイヤの「プレミアム戦略」である。プレミアム戦略には、二つの意味が含まれる。

 一つ目は、17~18インチ以上の高インチタイヤの販売強化だ。SUV(スポーツタイプ多目的車)の普及により、高インチの需要が世界的に増加している。

 軽自動車などに使用される14インチなどの低インチよりも、高インチの方が販売価格は高い。タイヤ1本当たりの利益率が同じだと仮定すれば、低インチよりも高インチを売る方が利益額は多くなる。

 二つ目が、高性能や高付加価値のプレミアムブランドの販売強化だ。「REGNO」やスタッドレスタイヤ「BLIZZAK」などが該当する。

 乗用車向けプレミアムタイヤ(高インチとプレミアムブランドを含む)の販売比率は、23年度に57%、24年度に60%、25年度は60%超を計画している。プレミアム戦略は、順調に推移しているように見える。

 しかし、プレミアム戦略にまい進する裏で、ブリヂストンは”致命的弱点”を抱えている。一体何か。

 次ページ以降では、ブリヂストンの致命的弱点と共に、中国メーカーなど新興勢の台頭で狭まる「ブリヂストン包囲網」の実態を明らかにする。ブリヂストンは、致命的弱点や包囲網をどのように克服し、成長へとつなげようとしているのか。