つまり、彼らはボールを手に持つと、最初の立ち位置とか、投げるまでの歩数、足を踏み出す方向、狙いをつけるスパット、腕の振り方、手首の返し方など、さまざまなことを考え、ボールが手を離れたらもう何もできないので、それまでのプロセスにすべての創意工夫をこらそうとするということです。
仕事も同じ。
自力で何とかできるのは、結果が出るまでの「プロセス」だけです。だからこそプロセスに最大限の力を注入して、やるだけのことをやる。その結果、どうなるかは、仏さまにお任せするというスタンスで、
「終わったことに対しては、結果から離れる」
という潔さを持つことが大切なのです。
これを私は「ボウリング理論」と呼んでいます。
仕事は「プロセス」にこそ重要なヒントがある
たとえば本を出版する場合、誰かが本屋さんで手に取って、あるいはネット書店で検索して、実際に「1600円払って買おう」と思うかどうかは、じつは印刷される前の段階でだいたい決まっています。
なぜなら、書店に並んでからは、著者も編集者も、本を提供する側の人たちはもう何もできないからです。
企画にはじまって、本の執筆、編集、組版、デザイン、校正など、一冊の本に関わるすべての人が制作のプロセスに全力を注入します。
もちろん出版されたあとも、宣伝を打ったり、書店で目立つように置き方を工夫したりするなど、部数を伸ばす努力はできますが、「制作」に関わることはプロセスがすべて、といっていいでしょう。
これもまた「ボウリング理論」です。
ベストセラーを出したある著者さんは、一つの企画を出すときは、常に最初に一〇〇〇個ものアイデアを出されるそうです。
どんなプロジェクトでもそのくらいの覚悟を持って、プロセスに力を注ぐことが肝要だ、と教えられます。
「置かれた場所で咲くことが大事ですよ」という本がベストセラーになりましたが、こと仕事に関しては、
「咲く可能性を秘めた仕事が、置かれた場所で花開いた」
ということなのでしょう。