
クマによる人身被害が相次いでいる。クマに襲われても生還できた人にはどんな共通点があるのか。秋田大学医学部附属病院高度救命救急センター長であり、クマ外傷治療のエキスパートである中永士師明(なかえはじめ)医師に、クマに襲われた人たちの「共通点」と、命を守るための「重要な持ち物」について教えてもらった。※本稿は、三才ブックス(編集)『ドキュメント クマから逃げのびた人々』(三才ブックス)の一部を抜粋・編集したものです。
気づいたときには
クマがもう目の前に
秋田大学医学部附属病院高度救命救急センターでは、傷病者の治療の際に、クマに襲われた状況をできるだけ聞くようにしている。人がクマに襲われるシチュエーションは変わってきているのだろうか。同センター長であり医師の中永士師明(なかえはじめ)氏に聞いた。
「2024(令和6)年の秋田県内の傷病者には、クマ狩りで山に入って受傷した猟師の方が1名いましたが、この方以外は、山に入っても自分からクマに遭おうと向かって行ったのではなく、偶然にも遭遇して襲われたという状況です。
また、これまではクマと遭遇する場所で多いのは山の中。山菜採りなどで山に入って受傷される方が大多数を占めていましたが、近年は市街地の例が多くなっています。
たとえば犬の散歩中に襲われた方。この方は、飼い犬が『ワンワンワン』と吠え出したので、『何だろう?』と不審に思っていたら、突然、クマがガバッと襲ってきたといいます。自転車に乗っていて襲われた方もいらっしゃいます。クマが見えた瞬間にはもう目の前まで迫っていて、あとはもう『何が起こったか覚えていない』と話していました。
特殊な例では、自宅の庭で遭遇し襲われた方もいます。このケースは遭遇場所としてはかなり珍しいでしょうね」