シンガポールは明確方針
「自国にプラスになる外国人」を受け入れる
アジアに目を向けると現在、シンガポールは移民の受け入れを一段と重視している。リー・シェンロン上級相は3月、「シンガポールの生き残りに移民は不可欠」との認識を改めて明示した。自国民の対立など移民政策にはセンシティブな部分があることを認めつつ、社会に順応できる移民を選別し、慎重に管理することが重要であるとの見解を示した。
それと同時に、移民の受け入れを閉ざせば(他の国と同じように)、成長の機会を逸することになると警告も発した。シンガポールは明確に、「自国にプラスになる外国人」を受け入れる方針を示している。今年6月、外国人労働者の増加でシンガポールの人口は過去最高の611万人に増えた。
わが国が、海外の移民政策から学べることは多いはずだ。ドイツの例が示す通り、外国人労働力は、人手不足の解消に有効だ。外国人労働力の取り込みにより、1950年代から70年代の旧西ドイツ経済は「奇跡」と呼ばれるほど復興し、さらに高成長した。高度人材を定着させることで、経済の効率性向上に寄与した。
移民受け入れを経済成長につなげるためには、自国民との共生が欠かせない。移民受け入れの初期段階から、言語、社会規範、そして法令順守に関する教育を徹底し、自国民と公正・公平に扱うことは重要だ。法律を守れないなら厳正に対処することは言うまでもない。
わが国は、移民の定義を明確化し、現実的な受け入れの体制を議論すべきだ。欧米が移民に厳しい姿勢を取り始めた今は、わが国が外国人労働力を受け入れるチャンスでもある。
四方を海に囲まれ、同質性が高い社会のわが国において、外国人受け入れの議論が難しいことは言うまでもない。それは長く指摘されてきた。一方で、わが国の少子高齢化による人口減少と労働力不足は、もう小手先の政策では何も解決できないレベルであることを国民も自覚すべきだろう。
外国人をどのように受け入れ、社会と経済の活力向上につなげるか。本格的な政策議論は待ったなしである。議論を先送りすれば、人口減少の加速を食い止められず、日本という国の力を維持することは困難になるだろう。