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2027年に旧バージョンのサポート保守期限が迫るSAP。ユーザー企業は新バージョンへのシステム刷新を進めているが、一方で刷新をせずSAPの公式サポート以外の第三者保守サービスを選択する大手企業も増えているという。特集『DX2025 エージェントAIが来る』(全22回)の#19では、普及が進む第三者保守サービスについて、利用者とサービス企業に聞いた。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
ITベンダーにとって一大市場となったSAP刷新
第三者保守サービスの普及で変わるのか?
経済産業省がレポートで指摘し、いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)ブームの先駆けとなった「2025年の崖問題」。その一つが大手ERP・SAPの保守切れという問題だった。SAP ECC6.0という旧バージョンの一部について、サポートが25年で終了するため、新バージョンであるSAP S/4HANAへの更新と、それに伴う基幹系システムのアップデートを行う必要があるといったものだった。
その後、旧システムのうちの一部は27年まで、さらに追加の保守料の支払いで30年まで保守が延長されることが発表されたものの、多くの企業がこぞってSAP刷新に動いた。
もともとSAPはERP市場でほぼデファクトスタンダードで、大手や海外事業を営む企業には漏れなく導入されているシステムである。その刷新需要は、IT業界全体に大きなビジネスを創出した。
SAPについての専門技術を持つコンサルタントやエンジニアが不足していることもあり、その単価は通常のエンジニアの3倍にも上ることもあった。刷新には億単位の投資がかかることも珍しくない。
SAP社が提供する標準パッケージを、自社向けにカスタマイズしたり付帯機能を付けたりしている企業も日本には多く、バージョンアップ一つ取っても一筋縄ではいかない困難さがある。旧システムの機能を安全に新システムに移行することができない場合、システムトラブルや不具合に襲われ、業務がストップすることもままある。
こうした傾向の中、実は別の動きも出てきている。それは、現在使っているSAPのシステムを刷新せずにそのまま使い続け、SAP社ではない第三者企業から保守サービスの提供を受けるというものだ。
企業業務をつかさどる基幹システムの保守契約にメーカー正規ではない企業からのサポートを選ぶ、と文字にすると一瞬戸惑いも生まれそうだが、この第三者保守契約を利用している企業は、東証プライム上場の大企業を含む200社以上に及ぶという。
これらの企業はなぜそのような選択をしたのか。第三者保守とはそもそもどのようなもので、そこにリスクはないのか。サービス提供社などへの取材を基に第三者保守契約を利用している企業のリストと共に次ページから明らかにしていこう。







