「私は本当に若手に助けられていますよ。その中のA君とB君はかなり対照的なんですよ」
はじめの言葉はB君に対するものです。さらにFさんの話は続きます。
「B君はプライドが高いんでしょうね。あまり良くない評定を通達したら、
『良い案件が僕には回ってこないんですよ』
とあくまでも周りのせいです。
『なぜでしょうね?』
と聞いてみると、だんまりです。
とにかく沈黙には負けないようにしています。部下の沈黙に負けて甘い言葉をかけたら、その場はとりなせてもゆくゆく良いことにはなりません。全員に最高評価をつけるわけにはいかないから最終的にはつじつまが合わず、信頼を損ねることになるからです。いたずらに面談時間が過ぎるのも困りものですが。それで、
『良い案件を任せてほしいと思っているんですね?』と聞いてみたら、
『はい、そうです』と。
『でも、良い案件だけを選んでいくわけにはいかないから、たくさんやってみるしかないよね。そこで信頼されれば、また任せよう、という上の判断にもなるのではないですか?』
『そうかもしれません』
『受けた案件に対して、誠実に取り組んで実績ができれば、大きな仕事の担当になれると思いますよ』
『はあ…でも、それはFさんの仕事のスタイルですよね?僕は早く仕事を覚えたいんです。でも、わかりました』
成長意欲が高いというのか、近道を探しすぎというのか。良い仕事が来れば実力が出せるというのは根拠のない自信ですね。そんな人に仕事を任せられないですよ。怖いです」