「中国の自動車って、運転していると情報が送られるんじゃないの?」
フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):今の時代、もはや“中国製”であることは気にしないけれども、これが“中国ブランド”となると話が違う。まだまだ根強い抵抗感がある。そして実に25%もの人が“中国ブランド”というだけでハナから拒絶するという調査結果があるという。これは衝撃的でした。
ですがそれはあくまでもイメージの話。もう一つの抵抗感の源泉に、中国車に対する「恐怖」があると思います。よくネットでも書かれていますが、「自分がどこで、どんな運転をしているか――そのすべてが中国に把握されているのではないか?」という恐怖です。「ああフェルの野郎。また違う女を乗せてドライブに行ってるなww」とか(苦笑)。クルマを使って行う行為が全てバレてしまうのでは……これは本当に恐ろしい。文春砲並みに恐ろしいです。

BYD Auto Japan株式会社 代表取締役 東福寺厚樹さん(以下、東):ははは、そこはご安心を。まず大枠の線引きをご説明しましょう。BYDの車は車両の機械的な状態、たとえば走行データやバッテリーのコンディション、故障診断コードの類、これらのデータはテレマティクスで常時監視しています。
これは開発、品質、保全のために、深セン側の管理組織が扱うデータです。一方で、「誰が乗っているか」「どのオーナーの情報か」という個人の特定情報は、日本側のサーバーで管理しています。深センとは完全に分離していて、紐付けされていません。全くの別物です。
F:つまり「BYDのこのクルマが、いま環八内回りの砧公園前を走っている」という情報は機械的に分かるが、「それを運転しているのはフェルだ」という情報は中国側には見えていない、と。この理解で正しいですか?
東:はい。その理解で正しいです。位置情報と車両の状態は把握しますが、個人を特定する情報は日本で完全に分離しており、中国側が人名ベースにその情報を参照するのは、物理的に不可能です。