テスラの「セントリーモード」のように、車内外をずっと録画しているのでは?
F:なるほど。もう一つの恐怖が動画です。テスラの「セントリーモード」みたいに、車内外の映像を常時録画して、溜め込んでいたりはしませんか?
東:溜め込んでいません。それは明確に否定します。というか、そもそもBYDの車両に車内外を常時録画する機能は付いていません。走行中の映像を残したければ、市販のドラレコを買ってユーザーさんに付けていただく必要があります。

F:すると、運転の粗暴さや、速度超過のような行為が逐一チェックされることもない?
東:ありません。常時見張る運用ではなく、車両保全のための状態監視が基本です。異常値の検知や傾向把握のためのシステムであって、個人を追いかける目的ではありません。
F:でも、わき見運転や居眠り検知のためのカメラ、いわゆるドライバーモニタリングのためのカメラは付いていますよね。つまり運転する人は常時撮影されている。この映像が中国に送られることはありませんか?
東:車種によりますが、ドライバーモニタリング機能があるクルマはあります。ですがあくまでこれはリアルタイム検知が目的で、映像を記録して外部に送る運用ではありません。
F:運転データの出し入れについて、ユーザーが自分でコントロールできる領域はありますか。例えば車両設定で情報共有をオフにするとか、それは可能ですか。
東:モデルやソフトウェアのバージョンで差があるため、一律の言い方は控えますが、どの項目がユーザー設定で切れるかは販売店で説明し、実機の画面で確認いただけます。
そもそも、UN-R155とUN-R156(※)に適合していないクルマは、日本で型式認定を取ることができないんですよ。つまり条件を満たさないと日本では売ることができない――ここが出発点です。
外部からの不正介入に対する設計と運用、それからアップデートの手順や監査体制まで、型式指定の段階で厳しく求められますし、その後の運用と更新も管理対象になります。当たり前ですが、BYDも、国から定められた枠組みの中で運用しています。
UN-R155:サイバーセキュリティ規則:車両とメーカーにCSMS(Cybersecurity Management System)の整備を義務づけ、脅威分析、設計段階の対策、量産・運用中の監視とインシデント対応、廃止時までの管理を求めている。
UN-R156:ソフトウェア・アップデート規則:SUMS(Software Update Management System)の整備を義務づけ、オフライン更新の真正性・整合性、バージョン管理、適用記録、ユーザー通知やロールバック手順などを規定する。
日本では国交省が「適合していないクルマは型式が取れない=売れない」という形で運用している。2022年以降段階導入を進めており、現在は新型だけでなく継続生産モデルも適用対象である。