当時の六太は、宇宙飛行士として世界から注目を集める弟・日々人(ひびと)と、宇宙飛行士の夢を諦めてしまった自分とを比較しては悶々としており、「兄は、弟を牽引する存在でなければならない」という固定観念に捉われていました。
でも、現在の六太は違います。
宇宙飛行士として、さまざまな訓練を通じて魅力的なリーダーや先輩、仲間と出会い、六太が本来持っていた強みや特性を発揮できるようになっていきました。
信頼されるリーダーは
裏方に徹してチームを支える
そして、難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)を患う天文学者・金子シャロンから託された月面天文台という壮大な夢を実現させ、さらには、日々人との「月面で会おう」という約束も果たしたのです。
加えて六太は、その過程において、JAXA(編集部注/宇宙航空研究開発機構)の同期である真壁ケンジや伊東せりか、月面基地で共にミッションに挑むチーム「ジョーカーズ」のメンバーといった仲間たちにも、影響を与えていきました。
こうしたシーンのほとんどで彼は、相手に対して過度な介入をしていません。「~してみませんか?」という呼びかけは行っても、「~するべきだ」と声高に主張したり、説得して行動を強要したりということがないのです。
あくまで当事者の意思を尊重し、サポートに徹する。と同時に、自分自身ができることを模索し実践することで状況を変えていく。そんな彼の姿や言葉に、周囲の仲間たちは自然と心を動かされていきました。
その結果、素晴らしいチームワークを発揮し、課題やトラブルを乗り越えてミッションをクリアしていったのです。
あれこれ口を出すより
任せたほうが伸びていく
僕は、六太のようなファシリテーティブなリーダーシップこそが、今の時代に求められていると考えています。
ファシリテーターとは一般的に、「メンバーの誰もが発言しやすいよう場を整え、対話を促進し、全員が納得できる合意形成へと導く」役割を担う人物を意味します。







