また、語る言葉が、他人に対しても自分に対しても「Should(~しなければならない)」で構成されていることが多くあります。

 一方、愚者風タイプは、一見すると優秀な人物には見えません。先頭に立って引っ張るというよりは、「どうすればいいと思う?」と、チームや相手の意見を聞きたがります。具体的なアクションについても、指示や命令ではなく、「私はこうしたい・こうしてほしい」といったニュアンスで伝えます。

 また、自分が完璧でないことを理解しているので、相手にも完璧を求めないし、競争での勝ち負けや優劣をつけることに価値を置かず、常にフラット。

 チームのメンバーは、「いつも頼りにしている」という意識はあまりないでしょう。むしろ「自分が支えている・フォローしている」くらいに思っているかもしれません。でも、一緒にいるとなぜか物事が「うまくいく」のです。

賢者風リーダーが抱える
「しんどさ」の正体

 賢者風と愚者風、どちらが正しいというわけではないですが、僕はあえて、みなさんにこう言わせてもらいます。「これからは愚者風でいこうよ!」と。

 賢者風リーダーシップを発揮するときには、乱暴な表現をすれば「しんどい」が常につきまといます。

「間違えてはいけない」というプレッシャーもそうですし、自分が優秀であることを自負しているため、周囲に対しても同等の評価を求めます。そしてそこにギャップがあると、「正しく評価されていない」と、大きなストレスになってしまうのです。

 また、先頭というポジションはひとつしかないので、そこに立とうとすれば、主導権争いやマウンティングが起きることも。そうなると、チームの本来の目的達成とは関係のないところで神経や体力をすり減らしながら、周囲からの信頼を得ることに注力しなければならなくなります。

……どうですか?僕だったら、これだけでも相当しんどくなって、リーダーシップを発揮する前に、ステージから降りたくなりそうです。