ただ、SNSは人と人の感情がぶつかり合う場所でもあって、他人に自分の気持ちを伝えるより他人を傷つけることを優先させたいと思ってしまうこともあるだろうから(むしろそう思って利用されているシーンの方が多そう)、攻撃的なネガティブ投稿はなかなか減っていかない。
オーディション番組発「菊池風磨構文」が
若者たちにウケた理由
ところで、ここ数年で「ネガティブフィードバック」という言葉をよく目にするようになった。検索してみたら解説記事は去年、今年で特に多く書かれている。
これは「相手のマイナスな点を指摘することでもっとよくしていこう」というような目的のもと行われるフィードバックである。
まあチームプレイや現場教育の際には当たり前のように連綿とされてきたことであろうが、なんでもハラスメントになりえるご時世では「ネガティブフィードバック」という言葉があった方が現場はやりやすかろうし、言っても直らないハラスメント常習の上司を「ネガティブフィードバック使い」へと自然に導いていける筋道として有効でもあろう。
今風の繊細な配慮に基づいた「ネガティブな事柄の伝え方のコツ」みたいなものも整理されていて、なかなか意義深い新概念である。
いくら現代日本は過去に比べてトゲが少なくなってきているとはいえ、対立や摩擦の労力を避けるべく相手に改善してほしい点を看過して黙して過ごすのはやはり健全ではない。
「改善点を伝える」は大げさに言うと相手の一部の否定につながりえるので(相手がそう感じてしまう可能性がある)きわめて繊細な事柄であり、慎重に伝える必要がある。
そこで出てくるのがネガティブフィードバックで、具体的なやり方には「具体的に指摘・よいタイミングで・個室で1対1・サンドイッチフィードバック(ほめる→ダメ出し→ほめる)の実践」などがある。
さて、話は変わって、菊池風磨構文というのがある。「XXじゃ無理か。YYはね、ZZしとかないと」という形を取るもので、オーディション番組でタレントの菊池風磨さんが参加者を厳しく叱責してよさそうなところユーモアまじりのニュアンスで「歌詞忘れてるようじゃ無理か。歌詞はね、入れとかないと」と、柔らかくたしなめた際の言い回しが発祥となっている。
おじさんにはなんのこっちゃなのだが、これが若い世代でネット中心にものすごく流行り、Z世代の流行語部門の1位 (2024年下半期)にもなった。※字面だけだとわかりづらいので、ぜひ動画を検索してみてほしい。
流行ったわけは、大喜利のような面白がられ方もしたのが大きそうなのだが、まさにネガティブなフィードバックを、菊池風磨構文というその世代特有の共通言語を用いることで優しく楽しく行える点がウケたからでもある……と、上の世代はその構文の生の温度感がいまいちわからないながらも、そう評価しているのであった。
今回はネガティブな投稿について論じたが、ネガティブな要素をいかに伝えるかについては「ネガティブフィードバック」や「菊池風磨構文」を見るに、世代を超えて模索されている最中であるように思える。伝え方の新たな地平に期待したい。