円満に退職へと至ることで、その後、部下が転職先でクライアントになったり、パートナーとしてなんらかの業務に関わったりする可能性もあります。

 その先を考えれば、長期的に良好な関係性を維持し、今後のネットワーク構築にも寄与することができるはずです。

3つの「辞める兆候」に
気づける上司とは

 部下が退職を考え始めると、往々にして普段の行動や雰囲気に兆候が出るものです。日々メンバーに接する中で違和感があれば、ぜひ芽を摘んで解決しておきたいところです。それは当人のみならず、組織のためにもなることです。

「辞める兆候」は数多く挙げられますが、「とどまるか辞めるか悩んでいる」段階から「転職を意識し始めた」段階、そして「退職意思を固めた」段階に至るまで、それぞれの心理状態に応じた特徴的な反応が見られることがあります。順に挙げていきましょう。

■第一段階「とどまるか辞めるか悩んでいる」

 まだ退職意思が明確ではなくとも、「この組織で今の仕事を続けていてよいのか……」と進退について悩んでいるときは、普段の態度や発言に多少の変化が表れるものです。たとえば、このような事例が象徴的です。

・自分から挨拶をしてこなくなったり、こちらからの挨拶への反応が薄くなった

・これまであまり自己主張しなかった部下が、給与交渉や昇格、部署異動などについて打診してきた

・仲の良いメンバー同士での世間話やランチ、飲み会への参加頻度が減った

・いつもは1人で過ごすことが多い部下が、急に連れ立ってランチや飲み会に行くようになった

・「●●さんが愚痴や不平不満をこぼしていた」との噂が聞かれたり、実際に本人の口からネガティブな言葉が出てくるようになった

 これらの兆候からは、本人が職場環境や業務内容、待遇などに何かしらの不満を感じていたり、悩みを抱いていたりする可能性が窺えます。心を許せる人に相談をしているケースもあるでしょう。この時点で、本人にとってのネガティブな要素をすくい上げ、解決することができれば、不本意な離職を未然に防ぐこともできるでしょう。