これまで不況に悩む電機や自動車各社を分析してきたが、その一方で「独り勝ち」と呼ばれる企業が存在する。小売業界でいえば、ファストフードの日本マクドナルドや、家具のニトリが挙げられるだろう。

 なかでもひときわ光彩を放つのが、カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングだ。以下では、日経平均株価の採用銘柄としての通称名である「ファストリ」と呼ぶことにする。

 筆者の住む栃木県小山市にもユニクロの店舗があり、平日にもかかわらず駐車場はいつも満車状態に近い。休日ともなると、ユニクロ周辺の道路は大渋滞を引き起こす。

 なお、私事で恐縮だが、小山市と書いて「おやま市」と読む。東京の品川区にある武蔵小山(こやま)の影響なのだろう。しばしば「こやま市」と読み間違えられる。全国一知名度が低いとされる栃木県の、その最南端に押しやられている市なのだから、「“こやま市”でも別にいいや」と考えている。

 昔、タレントの桜金造氏に「お、やぁま、ゆぅ~えんちぃ~」と茶化された。その遊園地は今やなく、ニトリやケーズデンキをはじめとするショッピング-センターに生まれ変わり、その地域一帯は「おやまゆうえんハーヴェスト・ウォーク」と呼ばれている。

 「盛者必衰の業界地図」を、一箇所で観察できるのが面白い。

ファストリの絶好調を支える
ビジネスモデル“SPA”

 さて、本題に戻ろう。ファストリのビジネスモデルを一口で表わすと、「SPAの代表」だ。これは“Speciality store retailer of Private label Apparel”の略称であり、「製造小売業」と訳され、アメリカの衣料品専門店「GAP」が嚆矢(こうし)とされる。

 堅苦しい定義を持ち出すことになるが、総務省統計局の「日本標準産業分類」を参照すると、「大分類I-卸売業、小売業」の下に「(2)製造小売業:製造した商品をその場所で個人又は家庭用消費者に販売するいわゆる製造小売業(菓子屋、パン屋などにこの例が多い)は製造業とせず、小売業に分類される」とある。