金融インサイド・吉岡秀二・SMBC日興証券社長インタビューPhoto by Yoshihisa Wada

SMBC日興証券が相場操縦事件で行政処分を受けた2022年10月7日から、3年が過ぎた。吉岡秀二社長は、SMBCグループの総合力を結集したリテール戦略や米ジェフリーズとの提携で“攻め”の成長を加速させる一方、組織風土改革こそが「社長としての一番の宿題」だと断言する。そのために導入した新制度とは何か。長期連載『金融インサイド』の本稿で、吉岡氏のインタビューをお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

2000兆円「貯蓄から投資へ」を動かす
銀証連携とSBI協業で打つ次の一手

――今年、日経平均株価が最高値を更新しましたが、好調な相場環境をどう収益に取り込んでいきますか。

 中長期的に株が上がっているのは、お客さまのマインドとしてすごくよいことです。大きな流れでいうと、新NISA(少額投資非課税制度)が始まったときから「資産運用立国化」が始まったわけですが、本番はこれからでしょう。

 2000兆円超の個人金融資産の半分を超える数字がまだ預金にあり、過去20年間で個人の金融資産は1.4倍にしかなっていない。われわれのような対面の証券会社が、お客さまにしっかりと訴求していくことが重要です。

 まず「一丁目一番地」として、富裕層にどうサービスを提供するか。人生の目標を明確にする「ゴールベースコンサルティング」を前提に、ブラックロック社の資産運用支援システム「アラジン・ウェルス」なども活用していく。

 同時に資産運用以外のローン、相続、事業承継といったニーズには、銀行・信託・証券でしっかり対応する。10月からは銀行代理業も拡大し、より総合的なサービスを提供していきます。

 銀行のお客さまにも資産運用サービスを提供するため、銀行と証券の間でフルスペックの証券仲介の仕組みを構築中です。その担い手として、今年からSMBCグループ全体で「グループリテールコース」を新設し、87人を採用しました。1年目は銀行、2~3年目は証券で経験を積み、4年目以降は本人がキャリアを選択します。証券の基礎を学んだ人が銀行に戻り、総合金融サービスの中で資産運用を担っていく。

――SBIグループとの協業についてはいかがですか。

 新たな富裕層として、われわれがグループとして捕捉できていない「デジタル富裕層」がいます。

 デジタルのリテラシーが高い人の中から富裕層が生まれてくることを見据え、SBIのプラットフォームの中から富裕層になられた方に対し、われわれが対面サービスの良さを提供するために合弁会社のOlive(オリーブ)コンサルティングを作りました。急に実績が上がるわけではなく、徐々に仕組みが効果を発揮していくものだと思っています。

――9月には米国の総合証券会社ジェフリーズとの提携を強化し、日本株事業を統合する合弁会社、SMBC日興ジェフリーズ証券を設立すると発表しました。顧客にどんなメリットがあるのですか。

リテール戦略で国内の足場を固める一方、SMBC日興証券は次なる成長の軸をグローバルに見据える。9月に発表した米ジェフリーズとの提携強化は、その象徴だ。この一手が生む顧客メリットとは何か。そして、国内最強クラスのM&A部隊を擁しながらも抱える課題とは。次ページでは、同社のホールセール戦略と、金利上昇局面で露呈した課題、そして吉岡社長が「一番の宿題」と語る組織風土改革の核心に迫る。