
愛知の地銀再編が現実味を帯びてきた。発端は10月7日、千葉興銀の統合を仕掛けた投資ファンド・ありあけキャピタルが、あいちフィナンシャルグループ(FG)の株式5.06%を取得したことが判明したためだ。市場は即座に反応し、あいちFGの株価は上場来高値を更新。愛知でも“第2の千葉興銀モデル”が動き出すのか。長期連載『金融インサイド』の本稿では、あいちFG株の買い手候補を先取りして検証。一方、水面下では金融庁も、持続可能性を巡る地銀頭取との対話を通じて再編に向けた動きを加速させている。同庁の幹部が、その進捗状況を明かした。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴、高野 豪)
愛知で地銀再編の機運が再燃
気になる買い手の有力候補は?
愛知県の地銀界に、再編の波が再び押し寄せている。発端は、またしても投資ファンドのありあけキャピタルだ。
10月7日、地方銀行を中心に投資を手掛ける同社が関東財務局に大量保有報告書を提出し、あいち銀行を傘下に持つあいちフィナンシャルグループ(FG)の発行済み株式の5.06%を保有していることが分かった。
ありあけキャピタルといえば、地銀再編の“仕掛け人”だ。2022年半ばに千葉興業銀行への投資を開始し、翌年1月には議決権比率を19.9%まで高めて筆頭株主に浮上。その後、25年3月に保有株式を千葉銀行に売却し、両行の経営統合の基本合意を導いた(『千葉銀行と千葉興銀「店舗統廃合なし」発言に漂う“成果なき経営統合”の兆候、投資ファンドが主導した再編に立ちはだかる壁とは?』参照)。
そのファンドが、今度はあいちFGに照準を定め、業界内では「千葉に続く再編の第2幕が始まった」との見方も出ている。千葉興銀、あいちFGは共に成長余地の大きい地域を拠点としながら、高い経費率という共通課題を抱えているためだ。
市場の反応も速かった。大量保有が判明した翌10月8日、あいちFG株は前日比335円高の3860円を付け、上場来高値を更新。再編の思惑が一気に広がった。
もっとも、元は3行体制だった千葉県と異なり、愛知県は名古屋銀行とあいち銀行の2行体制。あいちFG自体も再編を経たばかりだ。
22年10月に愛知銀行と中京銀行を傘下に収めるFG体制を発足させ、25年1月1日付で両行を合併し、あいち銀行が誕生。27年3月末までに約40店舗の統廃合に向け、スリム化を進めている最中である。ある名古屋銀のOBは「買い手候補が多く存在した千葉興銀とは違い、あいちFGを巡って現実的に動ける銀行は意外に少ない。今回はファンド側にもリスクがあるのではないか」と指摘する。
愛知を舞台に、地銀再編の号砲が再び鳴った。しかも足元では、ファンドに加え、金融庁も水面下で再編への動きを本格化させている。
金融庁が昨秋から開始した、地銀の持続可能性を見据えたトップとの対話では、すでに再編を念頭に置いたやり取りが進みつつある。どの程度の数の地銀と対話したのか、その進捗状況を幹部が取材で明かした。
次ページでは、ありあけキャピタルと金融庁、異なる思惑で動く二大プレーヤーが仕掛ける地銀再編の最前線に迫る。