・新しくて特別なこと

 イノベーションを実行する。クオリティ、コスト、時間、スコープのいずれも犠牲にすることを拒否し、まったく新しいやり方を見いだすのだ。陸上競技の走り高跳びでは、「背面跳び」の発明が競技のあり方を一変させ、文房具の世界では、付箋の「ポスト・イット」の登場により、ものごとを忘れないための画期的な方法が生まれた。バーコードは物流に革命を起こし、iPhoneはすべてのものごとを変えた。こうしたイノベーションと同様のことを目指すのである。

 もっと地味で地道なイノベーションの例として、新しいソフトウェアやアプリを開発したり、「エクセル」の新しい計算式を採用したりすることにより、課題を期限内に完了させる能力を飛躍的に高めることが可能かもしれない。イノベーションによる解決策は、5種類のなかで最も好ましい。これを目指すという発想はつねにもっておこう。ただし、これがうまくいくのはあくまでも例外的なケースであることも忘れてはならない。「衣類乾燥機を購入しよう」

まずはスケジュールを
変えない方向で考える

 『ジェームズ・クリアー式複利で伸びる1つの習慣』(邦訳・パンローリング)の著者ジェームズ・クリアーは、スコープを減らすアプローチを熱烈に提唱している。スケジュールではなく、スコープを変えよ、というのが、クリアーのキャッチフレーズのひとつだ。

 たとえば、時間が足りなくなったときは、5キロのジョギングをするのではなく、1.5キロのジョギングにとどめればいい、という。同様に、あまり手の込んだ料理をつくらない、家中を掃除するのではなく一部屋だけ掃除する、論文を5本読むのではなく、有力な論文を1本読む、といった具合だ。総じて、このアプローチはうまくいくことが多い。

 しかし、ときには、クオリティを減らしたり(スピードを速める)、時間を増やしたり(スケジュールを変更する)といった選択肢のほうが理にかなっているケースもある。