また、数字で分かるため、関係者の士気向上に効果がある点も魅力的だ。

 活人(「人をより活かす」ために山田氏はこう呼ぶ。基本的な概念は省人化と同じ)は損益計算書(P/L)における人件費の減少に直結する。原料・仕掛かり品・完成品在庫が減れば、貸借対照表(B/S)上の同様の項目がそれだけ減る。

 不要な仕掛かり品や在庫、生産設備の整理が進めば、今までより小さなスペースで同じ生産量を確保できる。その結果、複数の設備の間を行ったり来たりしていた人が移動する時間が減り、さらに生産性は高まる。

 何しろ、移動している時間は、製品は何も変化をしていない。つまり、製品の購入者に対して、付加価値を一切提供できていないのだ。加工されたり、梱包されたりと、「製品そのものの状態が変化する」ことでしか、付加価値は増えない。この当たり前の事実に気付けるかどうかは、カイゼンを進める上でとても重要だ。

 また、仕掛かり品や生産設備が減ることで工場にスペースができたため、借りていた倉庫や工場を返し、年間数百万円の賃料を浮かせてしまう会社もある。自社工場を丸ごと空けることができれば、他社に貸してもいいし、いい買い手がいれば手放してもいいだろう。

リスクがほぼゼロのカイゼン
どんな状況でも成果に

 貸したり売ったりせず、今まで外注していた作業を内製化すれば一層の経費節減になるし、外注先と製品をやり取りするよりも、自社工場内でやり取りするほうが圧倒的に早いため、生産にかかるリードタイムも短くなる。そうすれば、現場の負担なく納期を早めることもでき、より競争力が増す。

 もしくは新商品・新規事業向けのスペースとして使えば、新たな売り上げを生み出す拠点となる。練習用の設備を置いて、人材教育用のスペースにしてもいい。

 そして何より、カイゼン活動は景気や取引先の状況といった外部要因に左右されにくい。大掛かりな設備投資が想定通りの成果を上げるためには、計画通りの受注が求められる。それはつまり、景気や主要販売先の動向に左右されるという意味だ。