このような大型投資が空振りして借入金の返済に苦しみ、自己破産や民事再生を余儀なくされた会社は、枚挙にいとまがない。
カイゼンは投資金額が少なく、どんな状況でもそのまま成果になる。リスクはゼロといっていい。
分かりやすいゴール設定が
価値を生む作業につながる
オフィスワークを中心とした現場に話を移そう。こういった現場でカイゼンが浸透しにくい理由はいくつかある。
第1は、そもそもが製造現場から生まれた考え方なので、「オフィスとは関係がない」と多くの人が思っている点にある。
もう1つが、仕事の仕方の違いだ。オフィスワークでは、「この現場で1日に何をどれだけ生産するか」という目安が見えにくいのだ。
常に同時並行で複数の仕事があり、取引先の事情などもあり、予定が前後するなど、「待ち」の時間もあれば、「巻き」で作業する必要も出てくる。
工場でこのような事態があれば「異常」として特別扱いされる。しかし、オフィスワークでは織り込み済みのものとして扱われている。
工場では、「この生産ラインをカイゼンしよう」となれば、その生産ラインの稼働時間が8時間、配置人数は5人、製品Aなら1時間当たり100個、製品Bなら1時間当たり80個生産できる、といった基準がある。
こういった基準を基に、例えば、「生産量を維持しながら、配置人数を5人から4人に削減するにはどうしたらいいか」「製品Bの生産量を1時間当たり100個に引き上げるにはどうしたらいいか」といった形で具体的な目標が定まっていく。仮にこのような数字を明確に持っていなくても、生産実績から逆算すればおおよそ分かる。
工場以外でも、飲食店や保育園などであれば、「5人のシフトを4人でできるようにするにはどうするか」など、1日単位や半日単位での明確な指標がある。
分かりやすいゴールを設定することで、付加価値を生む作業とそうではない作業の分離が進めやすくなる。「付加価値を生まない作業」とは、例えば「製品が移動するだけ」「人が材料や工具を持ってくるだけ」といった作業を指す。







