“外貨”を獲得するには外の人に買ってもらうしかなく、そのためには地元に来て消費してもらうか、相手のいる場所に商品・サービスを届ける必要がある。

 一定規模の中小企業が維持・成長をしようとする場合、外の人に製品・サービスを届ける事業が現実的となる。最もシンプルなのが製造業だ。

 また、中小企業にとって地方での経営は採用面では有利に働く。地元で一定の知名度を獲得し待遇を整えれば、地元大学などから新卒を採用しやすい。また、東京などの大都市でキャリアを積んだ地元出身の人材がUターンする際の受け皿にもなれる。

 東京都区部にある中小企業では、このような形の人材確保は困難だ。さらに地方では競争相手が少ないため、一度、地方を支える会社だと認知されると、自治体などからのサポートも比較的受けやすい。

 ここからは、実際に人口減少が進む地方に本社を置きながら、日本全国に製品を届けて高収益経営を続けている2社を紹介する。いずれも、全国に通用する強い商品を持つメーカーだ。

全国に調味料を届ける
トキワの通販戦略とは?

 トキワが本社を構える兵庫県香美町の人口は、2010年時点で2万人を下回り、50年には7000人程度になると推測されている。

 トキワはそんな地域で1912年から酢の製造を始め、その後、しょうゆ製造なども手掛けて地元に親しまれてきた。そんな中、85年に地元企業からの要望を受ける形で「合わせ酢」を発売。地元で親しまれているかに料理向けのものだった。これが評判となり、地元以外からも引き合いが届くようになったという。

 96年には手元の280名の顧客名簿を基に通信販売を開始。このときの看板商品が、人気だった合わせ酢を基にした調味酢「べんりで酢」だ。味の良さに加え、砂糖やダシと合わせてあるため、消費者が自分で組み合わせることなく使える手軽さも「べんりで酢」がヒットした要因だ。

べんりで酢同書より転載
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