もちろん10代後半から20代前半の若者は現時点でたいした購買力を持たない。しかし収入の増大を見越して早い段階でターゲットとしてとらえるべく、商業的な注目度が高まっている。アメリカのZ世代はまずマーケティング対象なのだ。
ある顧客が一生涯で払うお金を指して顧客生涯価値(Life Time Value、LTV)と呼ぶ。LTV重視のマーケティング施策をとるなら、今後の人生が長く残されているZ世代は確かに有力な市場である。
とてもアメリカ的な思考から誕生した
戦争を知らない世代の符丁がZ世代だ
マーケティングの他にも、日本人からすればあまりピンとこないであろうZ世代を説明する重要なファクターがある。X~Z世代すべてにつながる、とてもアメリカ的な要素である。戦争だ。
X世代はベトナム戦争やキューバ危機の時代に生まれた人々を指す。Y世代はベトナム戦争終結からベルリンの壁崩壊。ちなみにY世代は非正規雇用労働者が多く経済不安を抱える世代でもある。
そしてZ世代は「戦争を知らない世代」なのだ。
「ガザは、Z世代にとってはじめてのリアルな戦争だ」。米大手メディアのウォール・ストリート・ジャーナルが2023年に出した記事タイトルである。
同年10月7日にパレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルに本格的な攻撃を仕掛け「2023年パレスチナ・イスラエル戦争」と呼ばれる戦争が勃発した。これがアメリカのZ世代にとって「初の戦争」だというのである。
背景構造として、アメリカにおける軍事の強固な存在感について言及すべきだろう。アメリカが覇権国であり続けてきた背景には、科学や技術、イノベーションの力があった。
それらの担い手は企業や大学であり、特に大学は国からの補助金が多くを占める。その国からのお金に軍がおおいに絡むのである。マサチューセッツ工科大学(MIT)やスタンフォード大学など著名な大学も軍から大規模な支援を受けている。







