このように性的同意にはグラデーションがあり、連続したコミュニケーションとしての理解が重要です。

 私がこのような性的同意の概念について説明すると、「もっと早い段階で正しい知識を学んでいたら、加害行為はしなかったかもしれない」と話す加害少年もいました。

 2023年には文科省主導で「生命の安全教育」が全国の学校で始まりました。幼児や小学校低学年ではプライベートゾーンの概念、高学年ではSNSの使い方、さらに中学校・高校では性暴力やデートDV、性的同意なども扱います。

 これは性暴力の加害者にも被害者にも傍観者にもならないための取り組みとしては一歩前進といえます。

 しかし、そもそも文科省が学校で教える内容を示す学習指導要領には、「妊娠の過程は取り扱わない」とする、いわゆる「歯止め規定」があります。そのため、なかなか学校では性交や妊娠について教えられないという足かせがあるのが現実です。

13歳以下の性非行は
刑事責任が問えない

 幼い子どもたちが性暴力の加害者、そして被害者になるケースもあります。ここで、とある保育施設で起きた事例を紹介しましょう。

 Fさんはここ数日、5歳の娘の夜泣きがひどくなったことが気になっていた。「どうしたの?」と訊ねても娘はしばらく何も語らなかったが、やがてポツリポツリと重い口を開いていった。

 聞くと、昼寝の時間に隣に寝ていた他の児童から身体を触られるなどの性的行為を受けていたことが判明した。一昨日はパンツを下ろされ、性器に指を入れられたという。加害児童は同じクラスの男児で、娘に対して「誰にも言っちゃだめだよ」と口止めをしていたのだ。

 Fさんは「幼い子どもがそんなことをするのか」とひどくショックを受けた。

 そして娘が通う保育施設に問い合わせたところ、園長は「うちの園でそんなことがあるはずがない」と真っ向から否定。園には防犯カメラもなく、物的証拠も望めなかった。さらに「娘さんは嘘を言っているのでは」という言葉まで飛び出してきた。