最初にお断りしておきたいが、ここで集計されているのは筆者が独自に調査したものである。名門・古豪といわれる歴史の古い学校には、途中で分離や合併などさまざまな変遷のある学校も多く、どの学校をもってどの学校の前身とするかの意見が分かれることもある。そのため、見解によって多少の誤差が生じることをご了解いただきたい。

 それではまず、今年の注目校から見ていこう。

 今年最も指名が多かったのは、茨城県の明秀日立高。本指名だけで能戸輝夢(中日4巡目)、高橋隆慶(ソフトバンク5巡目)、石川ケニー(オリックス6巡目)、野上士耀(オリックス7巡目)と一挙に4人も指名された。これまでのプロ選手は4人なので、今年だけで倍増することになる。

今夏優勝の沖縄尚学高校と、昨年夏に優勝した京都国際高校は?

 今夏の甲子園で選手権大会初優勝を果たした沖縄尚学高。選抜では2回優勝している強豪校だが、プロ入りした選手は意外と少なく、昨年までは12人。ただし、伊志嶺翔大(いしみね・しょうた、2010年ロッテ1巡目)、東浜巨(ひがしはま・なお、2012年ソフトバンク1巡目)と1巡目指名を2人出している。

 今年のドラフトでは、同校出身でオイシックス新潟の知念大成外野手を、巨人が育成5巡目で指名し、会場がどっと盛り上がる一幕があった。この他、前身の沖縄高時代の安仁屋宗八(広島など)もOBだ。

 昨年夏の甲子園で初優勝した京都国際高は、1999年の京都韓国学園時代に創部し、2004年に認可を受けて京都国際高校となった新しい学校だが、すでに12人がプロ入り。今年も清水詩太がDeNA育成1巡目で指名された。同校はこれまで全員が高校から直接プロ入りしており、しかも今年の清水選手を含めて13人中9人が育成指名という驚異的な育成率である。

慶応高から高卒でプロ入りした選手はいない

 この対極にあるのが、一昨年夏に全国制覇した慶応高。明治初期から活動していたという全国屈指の名門校で、一昨年の甲子園優勝は107年ぶりだった。プロ入りは戦前の旧慶応普通部を含めて14人。これとは別に旧慶応商工(のち慶応二高、現在は廃校)から3人プロ入りしている。慶応高は近年までスポーツ推薦がなく、実力で入学するしかなかったため、プロ入りするような選手はあまり出なかった。従って、戦後プロ入りした13人のうち9人は推薦制度が導入されて以降だ。

 しかも、慶応高からは原則全員慶大に進学できるため、この13人の選手は昨年米国の大学からプロ入りした根岸辰昇(ヤクルト)を除いてすべて慶大経由で、高卒プロ入りは一人もいない。