10年後(2035年)の自分に会ったときには…

 滝沢さんの視線の先には、後輩の仕事を思いやり、自分の生き方が何かの指針になればいい、という意志が読み取れる。

滝沢 事務所の先輩のダチョウ倶楽部さんが飲みに連れていってくれたり、有吉(弘行)さんが僕のゴミ清掃の話を世の中に紹介してくれたり、僕自身が良い先輩たちに恵まれて、お笑いの世界で生きてきました。そんな僕も、もう40代後半なので、若手芸人が活躍できる場や環境を用意できたらいいな、と。SDGs関連の活動にも後輩と一緒に取り組んでいます。30代後半の芸人が出演できるようなお笑いライブを考えてみたり。できるだけ、いろいろな人と仕事をしたい。普段やっていない仕事や、新しい活動を望む人と一緒に何かできないか――そんなことをいつも考えています。

「ごみプロジェクト(一般社団法人)」の代表理事を務め、イベントや講演活動を続けている滝沢秀一さん。いま、考えていること、これから進んでいく道はどのようなものか?

滝沢 ゴミ清掃員としての現場での仕事はずっと続けたいですね。70歳近い、知り合いのゴミ清掃の仲間は、「まだ辞めたくない」って言いました。その方は、ゴミ清掃という労働の喜びと価値をしっかり見つけていて、素敵でした。

 いま、多くの自治体で「ゴミ削減」の動きがありますが、単にゴミをなくせばいいというものではありません。政府が“ゴミ山”をなくしたフィリピンでは、地元の住民が「(ゴミ回収の)仕事を返せ!」と憤りました。鹿児島県大崎町の自治体は、「ペットボトルや紙を燃やすのはお金を燃やすこと」という考えで、焼却炉を建てずに資源を売っています。そうして、町が得たお金を教育費などに回していく。“ゴミの削減でうまれたお金を有効的に使う仕組み”が必要なのです。

 “日本一のゴミ清掃員”になるという僕の目標は、まだ道半ば。その日が来るまで、「ゴミを減らすことは楽しい」という発信を続けたいと思います。

 かつて、滝沢さんは、著書のあとがきに、「もし、タイムマシーンがあるなら、お笑いを始めた頃の自分に会いに行って『お前は20年後、ゴミの本を出すぞ!』と言いたい」と書いている。

 では、もし、10年後(2035年)の未来の自分に会いに行ったら、何て言うだろう?

滝沢 10年後は、僕は60歳近くになっています。その頃もお笑い芸人を続けていたら、「あんたは、とてつもなくラッキーだ」と言いたい。人望もないと、芸能界では生き残れませんから、「いただく仕事をありがたく思って、ひとつひとつしっかりやってくれ!」と伝えます。それと、僕はいろいろな人にこれまで救ってもらってきたので、その恩返しで、「誰かを救えているか?」と、60歳の自分に尋ねたいですね。