考え方を変えることで、見える景色が変わった

 そうした状況で、ゴミ清掃の仕事を丸2年続けた滝沢さん。しかし、ある日、人生を左右するような「考え方の転機」が訪れた。

滝沢 本業の“お笑い”で、マシンガンズとしてテレビに出たい気持ちでバラエティ番組を見ていたら、ひな壇のいちばん端にサンドウィッチマンの二人がいました。それを見て、僕は思いました――M-1(グランプリ)で日本一になった二人がそこに座っているのなら、僕の座るところなんてどこにもない、と。つまり、「マシンガンズは売れない」と悟ったのです。でも、“お笑い”を辞めたうえでゴミ清掃員を続けるのはメンタル的に厳しい。どうしようか?……とにかく、現実に向き合うしかなく、「サンドウィッチマンが日本一の漫才師だったら、僕は日本一のゴミ清掃員になろう!」と。そうしたら、次の日から“ゴミの見え方”が一変しました。それまでは、ただのゴミ袋にしか見えなかったのに、ひとつひとつのゴミに個性があることに気づき……仕事への考え方を変えたら、自分の見える景色が変わったのです。

 滝沢さんが執筆した本の中に印象的な言葉がある――それは、「居場所」という言葉。ゴミ清掃の仕事は、始めた頃はきつく感じたものの、周りの人たちが優しかったことで、「居場所」を得ることができたようだ。そして、「日本一のゴミ清掃員になろう!」という決意で仕事に前向きになり、ゴミの話や清掃員の日常をSNSで発信し、 “マシンガンズ滝沢”のもうひとつの顔が世間に知られるようになった。滝沢さんは、ゴミ清掃員としての確かな「居場所」を見つけたのだ。

滝沢 僕は、常日頃、人に恵まれていると思います。ゴミ清掃の仕事を丁寧に教えてくれるベテランの方がいたり、お笑い芸人の先輩が飲みに連れていってくれたり。立場が上の人の優しい振る舞いで、自分の居場所をつくることができました。普段、僕はあまりこんな言い方はしないのですが、仕事での人間関係が新しい僕を発見させます。たとえ、僕に重いゴミを持たせようとしたり、僕の言葉を感情的に否定したりする人がいたとしても、「どうしたら、相手の行動が変わるか」「こちらが苦しまないで済むか」を考えることにしています。相手が言っていることもいったん受け入れて考えてみれば、的を射ていることもある。そう考えたら、相手があまり嫌な存在だけではなくなる。妙な人がいても、「おもしろいなぁ。これはネタになる」って思えば、一緒にいるのが苦ではなくなります。