これから必要な「学ぶ力」は
「その子らしく輝く力」

 カンボジアでの実証実験の結果では、IQや算数のテストの点数で表現される「学力」が伸びると説明してきました。ただこれからの時代、偏差値としての「学力」だけが大切だとは思っていません。

 わたし自身、「学ぶ力」とは、「人生を切り拓き自分らしく輝く力」であると考えています。

 10年後の世界さえ予測できない時代、AIで取り出しやすい知識そのものよりも、「自分はどう考えるか」「何をおもしろいと思うか」に価値が一層生まれてきます。

「学ぶ力=意欲×思考力×知識スキル」でいう学ぶ力とは、学びを楽しむ力であり、その子がその子らしく、自分で考え、輝いていく力です。

 そしてそれは、結果的に偏差値などで見られる一般的な「学力」の伸びと捉えていただいても、構造に大きな違いはありません。

 この学ぶ力があることで、一般的な学力や、スポーツや仕事で発揮される力にもつながっていきます。

世界の教育トレンドも
「学ぶ力」を重視している

 世界の教育界でも、この方向性を裏付ける潮流が、15年以上前から生まれています。

 2009年には、シスコシステムズ、インテル、マイクロソフトなどの大企業とオーストラリア、フィンランド、アメリカなどの国々が参加するATC21sという国際プロジェクトが、「21世紀型スキル」について研究・発表するようになりました。

 そこでは、従来型の知識・スキルだけではなく、思考力や創造性、学びに臨む姿勢(非認知能力)が大切だとされるようになりました。

 私が興奮したのは、2019年にOECD(経済協力開発機構)が出した「ラーニングコンパス2030」という指針を見たときです。

 OECDのこの指針は、ただ「変化の時代に必要な人材」を育てるのではなく、個人や社会の幸福感(well-being)を最も大事な目的として追求する指針でした。そこでは、思考力や創造性、非認知能力に加え、自分が何を学びたいのか、自らの学びについてオーナーシップを持ち続けることの大切さも強調されています。