新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変わりつつある。そんな変化の激しい現代において「子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる親は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学、心理学、脳科学等、さまざまな切り口の資料や取材を元に「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(加藤紀子著)にまとめた。
「家での勉強のしかた」から「遊び」「習い事」「運動」「食事」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー。100の「してあげたいこと」を実践するにあたっては、さらに詳細な「421の具体策」で、実際に何をどうしてあげればいいのかまで丁寧に落とし込んでいる。
発売早々、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめあげた力作である」と評するなど話題騒然の1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。

「内発的動機付け」を高めるには?

「子どものやる気を引き出す」親の4大習慣Photo: Adobe Stock

 どうやったら自分からすすんで勉強するようになるのか。やる気にさせるにはどうすればいいのでしょうか。心理学では、人をやる気にさせることを「動機付け」といいます。

 動機付けはアメとムチ(ごほうびと罰)のように自分以外から影響を受ける「外発的」なものと、自分自身の中にある関心や興味、意欲による「内発的」なものに分けられます。

 外発的な動機付けは親がコントロールしやすく、すぐに効果が出ますが、長くは続きません。

 たとえば子どもが「悪い成績をとると怒られる」という理由で勉強すると、怒られるのを避けることが目的になってしまい、自発的に勉強しようとする意欲が低くなってしまうからです。

 効果が出るまでに時間はかかるものの、やる気を継続させるには、「内発的な動機付け」が必要といえます。

 では、子どもの「内発的な動機付け」を引き出すにはどうすればよいでしょうか?

【その1】「成功体験」を与える

 ロチェスター大学のエドワード・デシ教授は、「自分はやればできるという有能感があるとやる気が高まり、自分は何をやってもできないのだと思うほど、やる気が下がる」と指摘しています。

 ベネッセ教育総合研究所「小中学生の学びに関する実態調査報告書[2014]」の調査でも、自分はできるという気持ちが強い子どもほど内発的動機付けで学習に取り組み、成績もよい傾向にあることがわかっています。

 では、自分はできるという気持ちが弱いために子どもにやる気が出ない場合はどうすればよいでしょうか。

 法政大学の発達心理学者、渡辺弥生教授は、「成功体験」を与えることが重要だといっています。そのためには、「子どもが成功することができるよう、がんばれば必ず到達できるような目標や狙いを具体的に設定してやり、到達すれば『やったね』と達成感を与え、また次に成功できそうな目標を立ててやるといった、『スモールステップ』を設定するやり方が効果がある」といいます。

 達成感を得やすくすると、段階的に自信がつき、学習意欲につながります。

【その2】自分で選ばせる

 やることを自分の意思で自由に選択することができれば、内発的動機付けが高まります。

 デシ教授による実験では、ひとつのグループには「どのパズルを解くか、そのパズルにどのくらいの時間をかけるか」を自分で選択させ、もうひとつのグループには、最初のグループが選んだのと同じパズルを渡し、同じ時間内に解くように伝えました。

 すると、選択の機会を与えられた前者のグループは、後者のグループにくらべて意欲が高くなりました。何をいつ、どこで、どの順番でやるかなど、自分で自由に選択できることが、やる気をアップさせるのです。

【その3】頼り、ほめ、励ます

 また、デシ教授は、最初は外発的動機から始めたことでも、のちに内発的動機が大きくなってくることがあるといいます。

 最初は好きで始めたわけではなくても、まわりの誰かに頼りにされたり、ほめられたり、失敗しても温かく見守られていたりという経験をすると、楽しい、もっと知りたいという興味や関心に変化していくというのです。

 とりわけまだ意欲が低い段階だと「一緒にがんばれる存在」がモチベーションをアップさせます。

 学習に対して消極的な子には、大人がそばで励ましながら勉強を見てあげたり、年下の弟や妹など、ほかの子に教えさせたりすることが意欲を引き出すきっかけになります。

【その4】好きなことを主体的に学ぶ

 オックスフォード大学の心理学者であり、教育学者だったジェローム・ブルーナー教授は、好きなことを学ぶときに感じる楽しさや好奇心は、内発的動機付けの重要な源だといっています。

 好奇心を生かすには、子どもの好きなことを深掘りさせて、「知りたい」という気持ちを刺激し、親子で一緒に楽しむことです。主体的に取り組む姿勢が、学ぶ意欲を引き出します。

(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』の内容を抜粋・編集したものです)

参考文献

リチャード・ワイズマン『その科学があなたを変える』(木村博江訳、文藝春秋)
「小中学生の学びに関する実態調査 報告書[2014]」(ベネッセ教育総合研究所)