そして、途中で大きな勘違いをしていたことに気づく。

 私は瞑想を、人生に登場する数々のチャレンジ同様に、「修行」だと捉えていた。面倒くさく、ちょっと苦痛ではあるけれど、それに耐えてやり抜けば、それに対するご褒美として、痛みの少ない体や、クリアな頭を与えられるのだと思い込んでいた。だから眉を顰ひそめて瞑想に臨んでいたのだった。

 これが勘違いだと教えてくれたのは、わがミューズじゃいこさん(編集部注/鈴木じゃいこ。ニューヨーク在住のアーティスト)である。「温泉だって思えばいいんだよ」と教えてくれた。

 は!そんな単純なことに、自分はどうして気づかなかったのだろう。とにかく、温泉のお湯のように温かく、太陽の光がキラキラと入り、川のせせらぎが聞こえてくるような気持ちの良い世界、がんばらなくても自然に深い呼吸ができるような世界を、自分の体の中に想像すればいいのだ。

 それをやっていたら、これまで「苦行」だと思っていた瞑想が、とても気持ちの良いことに思えてきた。

 そして、そこに自分を置くことで、外界との接触の中で生まれるネガティブな感情や雑音を振るい落とす――それがなんとか実践できるようになってきた。

to doリストよりも
やらないことリストを優先

 ストレスとの付き合い方も、少しずつわかってきた。仕事や人間関係、身体的な無理などに起因するストレスは、脳や体に直接働きかける。解消しなければ慢性化する。

 ヤバいと思った時には、笑わせてくれる友達に会ったり、ライブ音楽を観に行ったり、無心で踊ったり、歩いたり。

 やけ酒や意味のないセックスのような自傷的行為に逃げていた時代もあるのだが、結局、一時的なリリースにしかならないのだ。

 パンデミックの最中にインナーピースを保つために、やらないことリストを作っていた。

・コントロールできないこと(他人の感情や起きている状況など)をコントロールしようとすること
・自分が持つ疑問、それも答えが出ない疑問を延々と考え続けること
・他者に過剰な期待を持つこと
・他者と自分を比べること

 そして、こうしたことはすべて「受け入れること」と「手を放す(Let go)こと」に集約される。