優秀な人は優先順位を決めない

吉田:ドラッカーは『経営者の条件』の「最も重要なことに集中せよ」という章で、「成果をあげるための秘訣を一つだけ挙げるならば、それは集中である。成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない」としたうえで優先順位についてこのようなことを言っています。

「どの仕事が重要であり、どの仕事が重要でないかの決定が必要である。唯一の問題は、何がその決定をするかである。」

「本当に行うべきことは優先順位の決定ではない。優先順位の決定は比較的容易である。集中できる者があまりに少ないのは、劣後順位の決定、すなわち取り組むべきでない仕事の決定とその決定の遵守が至難だからである。」

つまり、「やることを決める」よりも難しいのは、「劣後順位=やらないことを決める」こと

自分の生活を見直して、「これは削れるかも」と思えることを少しずつ手放していく。そうしてできた“空白の時間”に、何を入れるかがとても大切です。

ドラッカーは「成果をあげる人は、一度に一つのことしかしない」と言いました。

それは、“ひとつに集中する”ということが、同時に“自分の人生を選び取る”ことでもあるからです。

働く女性は、家庭でも職場でも、つねに複数の役割を同時に抱えています。母であり、妻であり、娘であり、上司であり、部下であり、友人でもある。

そのなかで「すべてを完璧にこなそう」とすれば、いつしか自分の時間は「誰かのための時間」だけで埋め尽くされてしまいます。

「今すぐやらなければならないこと」ではなく、「自分にしかできないこと」へ、少しずつ時間を移していくそのためには、思い切って“やらないこと”を決める勇気が必要です

たとえば、「この1時間はSNSを開かない」「休日の午前中は自分の学びだけに使う」など、小さな選択の積み重ねが、自分の人生を取り戻す第一歩になります。

誰にとっても一日は24時間。けれど、その“使い方の質”によって人生はまったく違う風景を見せます。

だから、バランスを取るよりも、「何を選ぶか」に意識を向けること。

“完璧なバランス”を目指すより、“今の自分にとって最も意味のある一点”に集中する

それが、働く女性にとっての新しいマネジメントの形だと思います。