お金のために働くことも大切だけど、「社会のため」という視点が大事

――社会との関係を意識することが、結果的に自分を守ることにもつながるのですね。

「社会のことを考えなさい」というと、他人のために犠牲になるような話だと受け取られがちです。

 でも私は、「自分もその社会の一員である」という前提で、全体を考えることが大事だと思っています。

 学生向けの講演でも、「お金のために働くのか、社会のために働くのか」という話をよくします。

 もちろんお金のために働くことも大切ですが、そこにほんの少しでも「社会のため」という視点を加えるだけで、働く意味や手応えは大きく変わります。それは「他人のために尽くせ」という話ではなく、「自分たちの社会だから考える」ということです。

 社会を意識することは、実はとても利己的な行為でもあります。なぜなら、社会のことを考えたほうが、味方が増えるからです。自分の行動が誰かの助けになり、その誰かがまた自分を支えてくれる…そうした循環が、人を強くしていくのだと思います。

 繰り返しになりますが、社会とは、誰かの働きが誰かの暮らしを支え、つながりの中で自分も生かされている仕組みです。社会のことを考えれば考えるほど、つながりは自然に増えていく。つながりこそが、人生のどんな局面でも自分を支えてくれる味方になります。

 お金のために頑張るだけでは、どうしても孤立しやすく、不安も増えやすい。けれど、社会という視点を少し加えるだけで、自分の努力が誰かの支えにつながり、巡り巡って自分にも返ってくる。

 そうやって新しいつながりを生みながら生きること。それこそが、これからの時代を前向きに生き抜くための、一番の心構えではないでしょうか。