一方的な譲歩を
迫られた中国
ふたを開けてみれば、中国は一方的に譲歩を迫られた。
報復措置として準備していたレアアース(希土類)輸出規制を1年間凍結し、さらにアメリカ産大豆とトウモロコシの輸入を再開することを決定した。農業分野はトランプ大統領にとって大事な票田の一つであり、弱点だった。
中国の妥協は「トランプの国内政策に協力する」という意味合いがある。
レアアースは中国にとって重要な切り札であり、本来ならこんなに早く出したいものではなかった。だが、トランプ関税によって国内的に「面目を潰された」習近平主席は、中国の優位を演出するために、ここで出さざるを得なかったのである。
半導体分野では、アメリカ製先端チップを禁輸することを確認している。
アメリカはフェンタニル対策を進めることを理由に対中関税を10%引き下げると発表したが、実際には依然として48%という高率が維持されている。アメリカ側の「妥協」は中国のメンツを保つには最低限のものだったと言える。
今回の首脳会談で中国が得た実利はほとんどなく、アメリカが制裁を緩めることなく外交的主導権を握った。日本以外の主要欧米メディアには「中国が折れた」と報じたところがあったのは当然だと言える。
譲歩の根底にある
中国経済の失速
この譲歩の根底には、中国経済の失速がある。2024年の実質GDP成長率は、第2四半期と第3四半期で5%台を割り込むこともあり、かつての高成長期の勢いは失われた。
しかも、これらの数字は拙速に出されたものであり、信頼性が高いとは言えないだろう。
輸出・不動産・投資という三本柱がすべて鈍化し、地方債務の膨張はほぼ制御不能な状態にある。中国大手デベロッパーの恒大集団の破綻以降、不動産市場は冷え込み、住宅価格の下落が中間層の資産を直撃した。若年層の失業率は15~19%(学生を除く)で、社会全体に閉塞(へいそく)感が漂っている。
一方で、アメリカによる半導体規制や外資企業の撤退が相次ぎ、中国の技術革新は停滞している。こうした経済の疲弊が続く中で、習近平政権は「全面対立よりも一時的安定」を優先せざるを得なかった。
中国の譲歩は、その苦しい経済状況の反映である。







