TV取材風景写真はイメージです Photo:PIXTA

「やらせ」「捏造」「誇張」など、テレビ業界では同じ問題が何度も繰り返されてきた。なぜこうしたことが起きるのか。元NHKアナウンサーの今道琢也氏は、番組制作の現場には避けられない構造的な事情があると語る。テレビの裏側に潜む現実とは?※本稿は、今道琢也『テレビが終わる日』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

やらせ、捏造、誇張、切り取り
テレビ業界が抱える大きな課題

 やらせ、捏造、物事の誇張、一面的な切り取りなどについては、どこでも起こりうるだろうな、というのは率直に思います。というのも、テレビ番組は、筋書きありきで制作されがちだからです。

 例えば、私自身このような経験をしています。ある湖で粒の大きなシジミが採れるということで、そのシジミの漁や料理などを紹介する企画がありました。私はその番組のリポーターだったので、担当ディレクターと一緒に、「ここで採れるシジミは大きい」という証言を取るべく、湖畔でシジミ料理を出す店主にインタビューを試みました。

 私が「ここで採れるシジミの大きさはどうですか」と聞いてみたのですが、期待に反して店主は「ここのシジミは小さいよ」と答えます。肩透かしを食らった私は、何度か角度を変えて同じことを聞いてみたのですが、店主からは「いや、ここで採れるシジミは小さいよ」という答えしか返ってきませんでした。

 そこで、取材のお礼を言って引き上げたのですが、ロケ車に戻ると担当のディレクターは「あのジジイ、『シジミが小さい小さい』言いやがって、あんなの使えねえ」と吐き捨てるように言ったのです。