経営統合後の体制について、カール・デッペン社長は「アーチオンは、日本だけでなく世界で成功するための人材をそろえた」と説明。また、小木曽社長はトヨタから取締役就任がないことについて、自らもトヨタでプリウスなど乗用車開発を手掛けてきたように「トラック・バスについてグローバルで経験のある人材がトヨタにいなかった」と述べた。

 今回の経営体制の発表により、日野自動車と三菱ふそうの経営統合後の新会社の運営は、ダイムラー・トラックが主導する構図が改めて明確になった。

 もともと、トヨタの連結子会社(トヨタ50.1%出資)としてトヨタグループのトラック・バス部門を担ってきた日野自動車は、商用車だけでなくトヨタの小型トラック「ダイナ」や「ランドクルーザー250」を受託生産するなど、トヨタ車の製造も手掛けてきた。だが、22年3月にエンジンの認証不正問題が発覚。不正が2000年代初め頃から続いていたことも判明し、ブランドの喪失に加え出荷停止という大きな事態へと発展したことで、業績を大きく悪化させた。

 この事態に、親会社のトヨタは日野自の“自力再建”を断念し、ダイムラー・トラックと水面下で日野自と三菱ふそう(ダイムラー・トラックが89.2%出資)の統合を探った。乗用車と性質の異なる商用車の日野自を支えることの限界をトヨタも感じていた中で、結果的に23年5月に日野自と三菱ふそう統合の基本合意を発表。その後、日野自の対外訴訟の決着や独占禁止法のクリアなどを進め、25年6月に統合の最終合意にこぎ着けた。

“トヨタ離れ”は新会社の体制からも明らかだが、他の側面からも浮き彫りとなっている。例えば、新会社アーチオンの株式は、トヨタとダイムラー・トラックが25%ずつ保有する予定だが、議決権比率ではトヨタ19.9%に対し、ダイムラーが26.7%になる計画が6月に公表済みだ。