日本サッカー界が背負った課題
求められる「インテグリティ」の徹底とは

 まずはJFAの組織全体に向けられる厳しい視線となる。求められるのは個人の高い価値観や姿勢に導かれる、内面的に自律した高潔な立ち居振る舞いを意味するインテグリティが徹底されているかどうか。具体的には性癖を含めた個人の性格をどこまで把握できるのか。宮本会長は次のように答えている。

「インテグリティチェックに関しては、理事、委員長を含めて一般企業が行うレベルのものはJFAとしても実施してきました。そのなかで今回の件を受けて、そういったものがどこまでチェックの対象になり得るのか、といったところは、まだしっかりと情報を収集できていない部分もあります」

 育成年代の少年少女の強化や普及も担っているだけに、子どもたちだけでなく保護者の心理として、どうしても不安や懐疑的な思いを抱いてしまう。宮本会長はさらにこう続けている。

「子どもたちが安心安全にサッカーでプレーできるような環境を、整えていくことが何よりも大切だとJFAとしては考えています。それを念頭に置きながら日々活動していくことを、常にサッカーファミリーのみなさまにお伝えしていくことが、私たちがいまやるべきことだと思っています」

 JFAは2013年から「暴力等根絶相談窓口」を設けている。活動現場における暴力行為などの早期発見及び是正を目的としたものだが、今回の不祥事を受けた非難や戸惑いなどは届いているのか。

「今回の一件に限らず、いろいろなものが届く体制になっています。ただし、それぞれについてどういった声があったのか、という点に関してのコメントはこの場では控えさせていただければと思います」

 宮本会長は明言を避けた。しかし、冒頭で記したANAの広告看板掲出中止は、影山氏が搭乗した航空機こそ異なるものの、機内での行為という点で問題を想起させる点を懸念した末の措置と見られている。メジャーパートナーを含めたスポンサーから、毅然とした対策や対応を求められるのも当然だろう。

 何よりも一度失った信頼を、国内外から再び取り戻すまでの道のりは生半可なものではない。来年6月に開幕するワールドカップ北中米大会での上位進出へ向けた森保ジャパンの継続的な強化とはまったく異なる領域で、日本サッカー界は極めて大きな課題を背負ったたまま前へと進んでいかなければならなくなった。