実は今年2025年というのは、中国共産党が「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年」と位置付けて、「日本による侵略行為」を国内外に大々的な宣伝キャンペーンを行っているタイミングなのだ。

 その代表例が、9月にあった軍事パレードである。ロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩最高指導者など26カ国の国家元首や政府首脳を招いた場で、習近平主席は「我々はファシズムとの戦いに勝利した」と高らかに宣言していた(中国外務省 9月3日)。

 もちろん、プロパガンダは中国の一般大衆に向けても強化されている。

 8月にはいわゆる南京事件を題材にした抗日映画「南京写真館」が公開され、興行収入トップになるなどヒットした。この映画の宣伝ポスターには、「中国人は誰も忘れないだろう」と書かれている(時事通信 8月29日)。

 このほかにも、日本軍の侵攻の中で、数百人のイギリス人捕虜を救出した中国人漁師たちの実話に着想を得た映画「東極島」や、抗日運動を追ったドキュメンタリー映画「山河為証」も公開。9月には、戦時中に人体実験を行なったと言われる731部隊を扱った映画「731」も公開され大きな話題となった。ただ、こちらは時代考証やストーリーが支離滅裂だと、中国の観客たちからも酷評されて興行的には大コケしている。

「中国社会の事情なんて知ったちゃないだろ」という人も多いだろうが、ここでちょっと中国共産党幹部になったつもりで想像していただきたい。

 このような形で今年、中国共産党としては「日本の戦争犯罪」を大いに盛り上げて、「日本の侵略を食い止めた我々だ」と勇ましく叫んできた。

 そんな矢先に、日本の歴代首相が言及を避けていた「台湾有事は日本の存立危機事態になりうる」ということを、高市首相が言い始めた。では、中国人民を納得させる、中国共産党の幹部としての振る舞いは以下のどれが「正解」か?

A. 「日中友好に水を差す失言だ」と失望を表明する
B. 「これは内政干渉なので厳重に抗議します」と強い言葉で非難する
C. 「また侵略してくるのなら返り討ちにしてやるよ」とケンカ腰で威嚇する

 これは「C」であることは明らかではないか。