(1) 個人コンサルとしての独立

 最もシンプルな独立の形は、個人コンサルとして案件を直接獲得し、クライアントと契約を結ぶスタイルです。

 ファームのブランドに頼らず、個人の信用のみで仕事を得るため、自由度が高く、収益性も高い傾向にあります。ファームに属していると、クライアントとの間に組織が入り、フィーの分配が発生しますが、独立すればその必要がなくなります。

 一方で、注意すべきなのが「一社依存」のリスクです。

 独立初期に大きなクライアントが見つかると、そこにリソースを集中させたくなるのは自然な流れです。しかし、一つの企業との関係に注力しすぎると、新規の営業活動が後回しになりやすく、結果として収入源が偏ります。契約の打ち切りや条件変更といった予期せぬ変化が起きた際、大きな影響を受ける可能性があります。

 このようなリスクを回避するために、初期段階から意識的にクライアント基盤を分散させることが重要です。例えば、まずは中小企業やベンチャー企業のクライアントを複数確保し、持続的に営業活動を継続する体制を整えておくことなどが、安定した独立経営の鍵となります。

(2) コンサルファームを立ち上げる

 より安定したビジネスモデルを志向する場合、コンサルファームを設立するという選択肢があります。

 個人ではなく法人として組織を構え、複数名で案件を受けることで、より大きな案件への対応や事業規模の拡大が可能になります。このモデルでは、独立時に「太いクライアント」、すなわち継続性と収益性の高い顧客を確保できるかどうかが、立ち上げ初期の成否を大きく左右します。

 ただし、組織を持つということは、単に優れたコンサルティングスキルがあるだけでは不十分です。経営者としての視座が求められ、売り上げ管理、コスト構造の設計、キャッシュフローの把握など、事業運営全般に関する知見が必要となります。

 中でも重要な課題は人材の採用・育成です。

 優秀な人材を採用できなければ、デリバリーの品質担保も難しく、ファームとしてのケイパビリティーも広がりません。大手ファームと比べてブランド力や報酬水準で劣るケースが多いため、どのように優秀な人材を惹きつけ、定着させるかが常に課題となります。