不満が出ないのはスウェーデンの
賃金格差が小さいから

 垂直的分離と水平的分離のどちらがより悪いかと言えば、高位の職のほとんどを男性が占める垂直的分離だ。

 スウェーデンのように水平的分離現象が深刻なケースでも、女性の比率が高い職種での待遇が悪ければ、やはり問題は生じうる。スウェーデンでは1970~1980年代まで、民間領域で吸収しきれなかった女性たちを国家が公共分野で雇用するという戦略をとっていた。

 民間でも、女性が選択する職業は大部分が保育、ケア、看護などのサービス職種だった。それでも、スウェーデンは女性の社会活動を保障する国として知られている。性差別の問題が指摘される国でもない。

 スウェーデンに対する批判が少ないのは、職種別の賃金格差が大きくないからである。

 スウェーデン女性は、子どもが小さいうちは子育てに多くの時間を費やす。子育てのために勤務時間を短縮する方法を選ぶ人もいる。6歳未満の子どもがいる女性は、一般的にパート労働(注2)を好む。

 他方アメリカでは、子どものいるパートタイマーの割合は極端に低い。6歳未満の子どもがいる女性パートタイマーの割合は24%と、経済協力開発機構(OECD)平均の30%をはるかに下回っている(注3)。

 スウェーデンとアメリカの最大の違いは、パート労働者の賃金水準である。スウェーデンでパートタイマーの大半は正規職であり、時間あたりでフルタイム労働者と同レベルの給与を保障されているのに対して、アメリカはそうではない。パート労働の質がよくないから、子どもがいる女性はなんとかして正規雇用の職を守ろうとするのだ。

(注2)スウェーデンでパートタイム(時短)労働をしている人の大半は正規職員である。非正規職員であっても、同一労働ー同一賃金の原則により賃金格差が生まれない制度が作られている。
(注3)チェ・ソンウン、ヤン・ジェジン「アメリカ中産層女性の仕事・家庭の両立の経路の歴史的形成過程に関する研究」、『韓国社会政策』第23巻第3号、2016年。