就労後も賃金格差に苦しむ
韓国の女性たち

 就業率の格差とともに注目すべきは男女の賃金格差である(注4)。2017年に韓国雇用情報院が発表した報告書によれば、高学歴女性の増加によって労働参加率が上昇し、性別間の賃金格差は以前に比べて縮小傾向にあるという(注5)。

 しかし、賃金格差は、相変わらず韓国社会が解決すべき問題であり続けている。雇用労働部(注6)が実施した2016年雇用形態別勤労実態調査によれば、正規雇用の女性の賃金は、正規雇用の男性が受け取る賃金の71.3%水準だった。

 非正規職の賃金格差問題(注7)はさらに深刻だ。韓国における非正規職の雇用形態は、短時間労働、期間制労働、限時的労働、派遣、用役などに分かれる。

 正規職の男性と非正規職の男性のあいだの賃金格差もかなりのものだが、女性はどんな形態の非正規職であれ、非正規職の男性より賃金が低いことが明らかになった。

『働きたいのに働けない私たち』書影『働きたいのに働けない私たち』(チェ・ソンウン著、小山内園子訳、世界思想社)

 賃金水準を10分位に区分した場合、所得が最も低い1分位に属する女性は全体の13.7%。割合は、男性(7.9%)に比べて5.8%ポイントも高い。高所得に該当する10分位に男性の13.2%が属しているのに対して、女性は4.4%に過ぎなかった。

 男女の賃金格差が大きくなる年齢は35歳から54歳までである。その時期の女性は、過半数近くが1~3分位相当の低い賃金しかもらっていない。

 さらに、女性はキャリア断絶で勤続期間が短くなるため、年次にともなう賃金上昇効果も反映されないことが多い。

 調査標本となった女性の半分以上が勤続3年未満だったのに対して、男性は過半数が勤続3年以上の労働者だった。

 韓国の女性たちは労働市場に参入するまでの困難に加えて、労働市場に入ってからの賃金格差という、二重の困難をあじわうのである。

(注4)日本における男女間賃金格差は男性を100とすると女性は74.8である(厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」。
(注5)パク・チニ、イ・シギュン、パク・セジョン「最近の性別賃金格差の縮小原因の分析」、『雇用動向ブリーフ』第8号、韓国雇用情報院、2017年8月。
(注6)日本における省庁に相当。
(注7)日本における雇用形態別賃金格差は、正社員を100とすると正社員以外は67.4である(厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」)。また、非正規職の67.8%を女性が占める(総務省「労働力調査(基本集計)2023年(令和5年)平均結果」)。