服装に関しては比較的おおらかな会社ではありましたが、さすがに素足にサンダルスタイルは、オフィスのファッションとしてふさわしくありません。

 彼女の上司も、注意したことがあったそうですが「全然、伝わらなかった」とのこと。

 気になった私は、「具体的に何と言って注意をしたのか」と尋ねました。

 答えを聞いて、納得しました。彼は「足、寒くない?」と聞いていたのです。

 これは、日本人特有の「はっきり言わないけれど、察してね!」という曖昧表現です。上司は「ストッキングか靴下を履いた上で、オフィスにふさわしい靴を履いてほしい」と伝えたかったのでしょう。

 しかし、「足、寒くない?」では、外国人には通じません。

 案の定、そのスタッフからは笑顔で「全然寒くないで~す」と、返ってきたとか。

説明上手な人が使っている
コミュニケーション方法

 コミュニケーションには「ローコンテクスト」「ハイコンテクスト」という2種類があります。

 コンテクストとは「文脈」、「背景」、「状況」を意味する言葉で、ローコンテクストは「言葉による表現を重視」し、ハイコンテクストは「言葉以外の表現を重視」するコミュニケーション方法です。

 わかりやすくいうと、ローコンテクストは、はっきりストレートに言葉で言うこと。

 一方、ハイコンテクストは、“暗黙の了解”や“空気を読む”ことなどが期待され、曖昧表現を使うこと。前述の上司の注意は、ハイコンテクストだったわけです。
 
 さて、次のやりとりを見て、あなたはどう思うでしょうか?

渡辺さん:「いや~まいったよ。A社への提案資料作成に手こずっちゃってさ~。今日も何時に終わるか、わからないんだよね……(ため息)」

横山さん:「……そうなんですね。お疲れ様です」

 気が利く人なら、渡辺さんの手伝ってほしい雰囲気を察して「手伝いましょうか?」となるかもしれませんが、単なるグチにも聞こえますから、横山さんは少し迷いつつ帰ってしまいました。これを、“ローコンテクスト”で言い換えてみましょう。